ためになる不動産用語集
あ行
IT重説
不動産取引における重要事項説明を、インターネット等を利用して対面以外の方法で行なうこと。宅地建物取引業法が定めている重要事項説明における対面原則の例外である。
IT重説の導入に当たっては、関係書類を十分に確認できること、双方向で確実にやりとりができること、宅地建物取引士が実際に説明することなどの要件を満たすとともに、消費者が不利益を被らないよう措置する必要がある。そのための条件等について検討・検証が進められ、不動産の賃借に当たっての重要事項説明に限って、一定の条件を満たす場合に、IT重説を対面による説明と同様なものとして認める運用がなされている。
アセットマネジメント
委託を受けて不動産などの資産の形成、運用、保全を行なうことをいう。
その際に重要なのは、投資目的に沿ってリスクとリターンをコントロールすることであり、資産価値を評価するほか、投資内容や投資先の分散、投資期間の設定などについて工夫することが要求される。
また、その業務は多岐にわたり、例えば不動産を組み込んだアセットマネジメントにおいては、投資不動産の選定や売買だけでなく、不動産の収益性を左右する賃料の設定、テナントの選定などの業務にも関与する。
受託の方法として、大きく信託による方法と受委託の契約による方法とがある。
その業務は、前者は主として信託業法によって規制される。
後者は主として金融商品取引法や宅地建物取引業法などによって規制されている。
遺産分割協議
分割協議は、必ず相続人全員で行わなければなりません。相続人に未成年者がいる場合は、その代理人の参加も必要です。相続人が1人でも欠けた状態で行うと、その結果は無効となります。
また、あとで問題が起こらないよう、協議の結果は書類に残すとよいでしょう。この書類のことを「遺産分割協議書」といいます。
詳しくは、司法書士等に相談すると良いでしょう。
遺留分減殺請求
遺留分減殺請求は、「遺留分を取り戻す」ための権利や手続きのことを指しています。言い換えれば、実際に遺留分を侵害されている遺留分権利者にだけ認められた権利で、請求の相手方は遺留分を侵害するような贈与・遺贈・相続を受けた相続人等になります。
遺留分減殺請求権は遺留分減殺の意思表示を行うことによって行使され、その意思表示の内容は「あなたが侵害している私の遺留分を返してください」といった簡単なもので認められるようになっています。
詳しくは弁護士の先生に相談すると良いでしょう。
オーナーチェンジ
賃貸住宅の所有者が、賃借人が入居したままその建物を売却することをいう。
購入者は新たに賃借人を見つける必要がなく、投資用賃貸物件でよく使われる方法である。
事前に賃借人から預かっている敷金、建物の管理上のルール、修繕履歴等を十分確認する必要がある。
か行
解約手付
手付の一種で、手付の放棄(または手付の倍額の償還)によって、任意に契約を解除することができるという手付のこと(民法第557条第1項)。
通常、契約を解除するためには、解除の理由が必要である。
具体的には、「法律上の解除原因の発生(債務不履行、売主の担保責任)」か、または「契約成立後に当事者が解除に合意したこと(合意解除)」のどちらかが必要である。
しかしわが国では、手付を交付することにより、契約を解除する権利を当事者が保持し続けるという手法を用いることが非常に多い。
これは、売買契約成立時に買主が売主に手付を交付し、買主は手付を放棄すればいつでも契約を解除でき、手付相当額以外の損害賠償を支払わなくてよいというものである。
また売主も、手付の倍額を買主に償還することで、いつでも契約を解除でき、手付相当額以外の損害賠償を支払わなくてよい(これは「手付倍返し」という)。このように、手付相当額の出費を負担するだけで、いつでも売買契約関係から離脱できるのである。
管理組合
分譲マンションなどの区分所有建物において、区分所有者が建物および敷地等の管理を行なうために区分所有法にもとづいて結成する団体のこと(ただし区分所有法上では「管理組合」という言葉を使用せず、「区分所有者の団体」と呼んでいる)。
区分所有建物においては、区分所有者は区分所有法により、当然にこの「管理組合」に加入することとされているので、区分所有者の任意で管理組合から脱退することはできない(区分所有法第3条)。
このような管理組合は、集会(いわゆる管理組合の総会)を開き、管理に関するさまざまな事項を議決し、管理規約を定める。
また、管理組合の通常業務を執行するために、管理規約にもとづいて複数の理事が選出され、この理事によって構成される理事会が業務を行なう。
管理組合には、自主管理と管理会社に業務を委託する場合のどちらかが一般的である。
また管理組合は、法人になることができる。法人になった管理組合は「管理組合法人」と呼ばれる。
カーシェアリング
複数の者が自動車を共同で使用することをいう。
利用する者をあらかじめ特定または登録し、一定の場所でその者が自動車を借り、一定の時間後に一定の場所に返却する方法で行なわれるのが一般的。
レンタカーは、不特定の利用者に自動車を貸し出す営利事業として実施されているのに対し、カーシェアリングは、特定の者が共同で利用することに特徴がある。
利用者の資格、利用する自動車の種類、利用料金、貸出・返却の場所などはさまざまである。そのルールは、短時間の利用にも対応するべく定められている。
キャッシュフロー計算書
企業の一会計期間におけるキャッシュ・フロー(現金の出入り)の状況を明らかにする書類をいう。
英語でCash Flow Statementといわれることから、「CS」と略されることもある。
損益計算書は、営業収益(売上高)や費用は取引が行なわれた時点で計上すること(発生主義)、設備費用を減価償却により複数年度にわたって計上することから、現実の金銭の出入りをそのまま反映したものではない。だが、取引においては、企業の支払能力が重要であることから、現金の出入りを明確に示すことが要請される。
そこで、キャッシュフロー計算書を作成して、一会計年度、半期または四半期における資金の流入・流出を表示することとされている。
キャッシュフロー計算書は、資金の出入りの原因に対応する形で、営業キャッシュフロー(営業活動に伴う現金の動き)、投資キャッシュフロー(投資活動に伴う現金の動き)、財務キャッシュフロー(財務活動に伴う現金の動き)の3つに分けて表示されている。
キャッシュフロー計算書によって、企業活動による現金の動きを把握し、事業活動の状態等を分析するための基礎的なデータを得ることができる。
共用部分
分譲マンションのような区分所有建物について、区分所有者が全員で共有している建物の部分を「共用部分」という。
その反対に各区分所有者がそれぞれ単独で所有している部分は「専有部分」と呼ばれる。
具体的には、次の3つのものが「共用部分」である(区分所有法第2条)。
1.その性質上区分所有者が共同で使用する部分(廊下、階段、エレベーター、エントランス、バルコニー、外壁など)
2.専有部分に属さない建物の付属物(専有部分の外部にある電気・ガス・水道設備など)
3.本来は専有部分となることができるが、管理規約の定めにより共用部分とされたもの(管理人室・集会室など)
このような1.~3.の共用部分は、原則として区分所有者全員の共有である(区分所有法第11条)。
また共用部分は共有であるため、各区分所有者はそれぞれ共用部分に関する共有持分を持っていることになる。
この共有持分の割合は、原則として、専有部分の床面積(専有面積)の割合に等しい(区分所有法第14条)が、この割合は規約により変えることができる。
また区分所有者は、その共用部分の共有持分のみを自由に売却等することはできない(区分所有法第15条)。
極度額
根抵当権の目的不動産により担保される債権の弁済上限額。根抵当権の設定に当たって定められ、根抵当権者は、極度額を限度に、確定した元本および利息等・損害賠償金について根抵当権を行使すること(他の債権に先立って弁済を受けること)ができる。
極度額は、利害関係者の承諾を得なければ変更できない。
また、元本の確定後は、極度額を、現に存する債権の額および以後2年間に生ずべき利息等・損害賠償金の合計額に減額することができる。
根抵当不動産を取得した第三者等は、元本確定後の債務額が極度額を超えている場合、極度額を支払うことによって根抵当権を消滅させることができる。
区分所有者
分譲マンションのように独立した各部分から構成されている建物を「区分所有建物」という。
この区分所有建物において、建物の独立した各部分のことを「専有部分」という。
区分所有者とは、この専有部分を所有する者のことである。
区分所有者数
分譲マンションなどの区分所有建物において、専有部分を所有している者のことを「区分所有者」という。
この区分所有者は管理組合を結成し、集会において管理規約を議決し、同じく集会においてさまざまな議案を議決することができる。
このように集会で議決を行なう場合には、通常の案件は普通決議で議決し、特別の案件は特別決議で議決することになるが、どちらの議決方法においても、「区分所有者数」のうちの一定以上の賛成が必要である。
ここでいう「区分所有者数」とは、次のような方法で求めた数である。
1.1人が1つの専有部分を1人で所有しているときは、「1」と数える
2.1人が2つの専有部分を1人で所有しているときは、「1」と数える
3.2人が1つの専有部分を共有しているときは、「1」と数える
【例】
東京都内の分譲マンションに4つの専有部分があると仮定。
それぞれに101号室、102号室、103号室、104号室という名称がついており、101号室はAさんの所有、102号室と103号室はBさんの所有、104号室は夫婦(CさんとDさん)の共有であったと仮定。
このとき区分所有者数は、Aさんで「1」、Bさんで「1」、CさんとDさんの夫婦で「1」と数えるので、区分所有者数は全部で「3」ということになる。
区分所有建物
区分所有建物とは、構造上区分され、独立して住居・店舗・事務所・倉庫等の用途に供することができる数個の部分から構成されているような建物のことである。
区分所有建物となるためには次の2つの要件を満たすことが必要である。
1.建物の各部分に構造上の独立性があること
これは、建物の各部分が他の部分と壁等で完全に遮断されていることを指している。ふすま、障子、間仕切りなどによる遮断では足りない。
2.建物の各部分に利用上の独立性があること
これは、建物の各部分が、他の部分から完全に独立して、用途を果たすことを意味している。例えば居住用の建物であれば、独立した各部分がそれぞれ一つの住居として使用可能であるということである。
上記1.と2.を満たすような建物の各部分について、それぞれ別個の所有権が成立しているとき、その建物は「区分所有建物」と呼ばれる。区分所有建物については、民法の特別法である区分所有法が適用される。
代表的なものとしては分譲マンションが区分所有建物である。
しかし分譲マンションに限らず、オフィスビル・商業店舗・倉庫等であっても、上記1.と2.を満たし、建物の独立した各部分について別個の所有権が成立しているならば区分所有建物となる。
区分所有建物では、建物の独立した各部分は「専有部分」と呼ばれる。
また、この専有部分を所有する者のことを「区分所有者」という。
廊下・エレベータ・階段などのように区分所有者が共同で利用する建物の部分は「共用部分」と呼ばれ、区分所有者が共有する。
※集会所等、管理規約によって定められた、共用部分を「規約共用部分」という。
また建物の敷地も、区分所有者の共有となる(ただし土地権利が借地権である場合には「準共有」となる)。このとき区分所有者が取得している敷地の共有持分は「敷地利用権」と呼ばれる。
従って区分所有建物においては、区分所有者は、専有部分の所有権、共用部分の共有持分、敷地の共有持分という3種類の権利を持っていることになる。
区分所有法
分譲マンションなどの区分所有建物に関する権利関係や管理運営について定めた法律。正式名称は「建物の区分所有等に関する法律」。
区分所有建物とは、分譲マンションのように独立した各部分から構成されている建物のことであり、通常の建物に比べて所有関係が複雑であり、所有者相互の利害関係を調整する必要性が高い。
このため、1962(昭和37)年に民法の特別法として区分所有法が制定された。これにより、専有部分・共用部分・建物の敷地に関する権利関係の明確化が図られ、規約・集会に関する法制度が整備された。
その後、分譲マンションが急速に普及したことに伴って、分譲マンションの管理運営に関するトラブルが生じたり、不動産登記事務が煩雑になるなどの問題点が生じたので、1983(昭和58)年に区分所有法が大幅に改正された。このときに、区分所有者が当然に管理組合を構成すること、集会での多数決主義、建替え制度、敷地利用権と専有部分の一体化などが定められた。
また、1995(平成7)年の阪神・淡路大震災において被災マンションの建て替えが課題となったこと、老朽化したマンションの建て替えや大規模修繕を円滑に行なう必要が生じたことから、2002(平成14)年には、復旧決議における買取り請求規定の整備、建替え決議要件の緩和、団地内建物の建替え承認決議の創設などが措置された。
なお、マンションの建て替え等に関しては、「マンションの建替え等の円滑化に関する法律(略称「マンション建替え円滑化法」)」において、合意形成や権利調整についての特別の規定が定められている。
競売
債権者が裁判所を通じて、債務者の財産(不動産)を差押の後、競りにかけて、最高価格の申出人に対して売却し、その売却代金によって債務の弁済を受けるという制度のこと。
建ぺい率
建築面積を敷地面積で割った値のこと。
例えば、敷地面積が100平方メートル、その敷地上にある住宅の建築面積が50平方メートルならば、この住宅の建ぺい率は50%ということになる。
建築する建物の建ぺい率の限度は、原則的には用途地域ごとに、都市計画によってあらかじめ指定されている。
更新料
建物の賃貸借契約を更新する際に、借主から貸主に対して支払われる金銭のことをいう。
支払いを求めるためには、支払いについての事前に双方の合意が必要である。
更新料をめぐっては、その支払い合意は無効である。との訴訟が提起されているが、最高裁判決(平成23年7月15日、第二小法廷)は、
1.更新料は、一般に、賃料の補充ないし前払い、賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有するものと解するのが相当
2.更新料の支払いには、およそ経済的合理性がないなどということはできず、また、一定の地域において、期間満了の際に賃借人が賃貸人に対し更新料の支払いをする例が少なからず存することは公知であること、裁判上の和解手続き等においても、更新料条項は公序良俗に反するなどとしてこれを当然に無効とする取扱いがされてこなかったことに照らすと、賃借人と賃貸人との間に更新料条項に関する情報の質および量ならびに交渉力について、看過し得ないほどの格差が存するとみることはできない
3.賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は、更新料の額が賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り、消費者契約法10条にいう「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」には当たらないと解するのが相当
として、一定の条件のもとでその適法性を認めた。
公示価格
地価公示法にもとづいて土地鑑定委員会が公表する土地の価格をいう。
適正な地価の形成に資するため、全国の都市計画区域内等に設定された標準地(平成19年地価公示では3万地点)について、毎年1月1日時点のその正常価格を複数の不動産鑑定士が鑑定し、土地鑑定委員会で審査して決定した価格であり、同年3月下旬に公表されている。更地の単位面積当たりの価格として示される。
公共事業のための用地買収価格は、この価格を規準に決めなければならないとされているほか、民間の土地取引においてもこれを指標とするよう努めるべきとされている。
なお、各都道府県も、毎年7月1日時点でほぼ同様の調査を実施し、「都道府県基準地標準価格」として公表している。
【参考】
◆国土交通省のサイト:国土交通省「地価公示/都道府県地価調査」
公正証書遺言
公正証書遺言とは、遺言書を公正証書にしたもので、公証役場で作成します。
公証役場にいる公証人と呼ばれる人が、法律の規定どおりに公正証書として書類を作成するので、確実に有効な遺言書を残したいときや相続財産の金額が大きい時に主に利用されています。
司法書士等に相談すると良いでしょう。
公正証書
個人や法人からの嘱託により、公証人が公証役場で作成する契約書・合意書などのことをいう。
公正証書の内容としては、不動産売買契約、不動産賃貸借契約、金銭消費貸借契約、遺言などが一般的であるが、公序良俗に反しない限り、どのような契約や合意であっても公正証書にすることが可能である。
公正証書を作成するには、当事者全員(または委任状を持参した代理人)が公証役場に出頭し、公証人に案文を提出し、公証人が公正証書を作成し、当事者全員に読み聞かせ、当事者全員が署名捺印するという手続きを踏む。
このため、文書の内容に関して後日裁判になった場合でも、文書の内容が真実であることが非常に強く推定されるので、公正証書に記載された内容がそのまま裁判で証拠になるというメリットがある(これを「証拠力」という)。
公簿売買と実測売買
土地の売買契約における取引価額の確定に用いる土地面積の違いによる区別で、土地登記簿の表示面積を用いて価額を確定する公簿売買、実測面積によって確定する場合を実測売買という。
とりあえず登記簿の表示面積で金額を定めて契約し、後ほど実測面積による金額との差額を精算する方法も、実測売買である。
公簿売買は測量が不要で簡便な方法であるが、実測面積が小さいと判明したときには紛争となりやすいため、それを回避するべく、契約において、実測面積と差異が生じても取引金額は変更できない旨を定めることが多い。
固定資産税
毎年1月1日現在において、土地・家屋等を所有している者に対し、市町村が課税する地方税。
不動産の所在地の市町村が課税の主体となるので、実際の徴収事務は市町村の税務担当部署が行なう。
固定資産税の納付方法については、年度初めに市町村から土地・家屋の所有者に対して、固定資産税の「納税通知書」が送付されてくるので、それに従って年度内に通常4回に分割して納付することとされている。(ただし1年分をまとめて先に支払うことも可能)
固定資産税の税額は原則的に「固定資産税課税標準額の1.4%」とされている。
ただし、一定の新築住宅については固定資産税額の軽減措置が実施されている。また、住宅用地については固定資産税課税標準額そのものが6分の1または3分の1に圧縮されている。
固定資産税は毎年1月1日において、固定資産課台帳に所有者として登録されている者に課税される。
従って、年の途中で不動産の売買が行なわれて、所有者が変わった場合であっても、納税義務者は元の所有者となる。こうした場合には不動産売買契約書において、その年度分の固定資産税額の一部を新所有者が負担するという特約を設けることが一般的である。
コンバージョン
建物の用途を変更すること。
例えば、空きオフィスを集合住宅に変更する、社員寮を集合住宅に変更する、というような変更を指す。
構造、設備、防災法規など、法的、技術的にクリアしなければならない点も多い。
さ行
債務不履行
債権・債務の関係において、債務が履行されない状態をいう。
例えば、売買契約において、代金を支払ったにもかかわらず、売り主が物件を引き渡さないときは、売り主は引渡し義務を怠っていて、「債務不履行」にあたる。
このような債務不履行に対しては、法律(民法)により、債権者が債務者に対して損害賠償を請求することができるとされている。
ただし、債務不履行を理由とする損害賠償を請求するには、次の条件を満たすことが必要である。
1.債務者が債務を履行しないこと(履行不能・履行遅滞・不完全履行の3形態がある)
2.債務者に故意または過失があること
3.債務不履行を正当化するような法律上の理由が存在しないこと
差押登記
不動産に対する差押が行なわれた際に、不動産登記簿に記載される登記のこと。
競売または公売の手続きが正式に開始されたことを公示する登記である。
差押の登記に書かれる「原因」には、次の3種類の文言がある。
1.抵当権等を実行するための任意競売が開始されたとき
→原因「競売開始決定」
2.裁判所の判決等に基づく強制競売が開始されたとき
→原因「強制競売開始決定」
3.税金の滞納に基づく公売が行なわれるとき
→原因「税務署差押」
指値
売買の注文を委託する場合に指定する取引希望価格、または価格の範囲をいう。
証券取引所等での売買、委託販売など、客の注文を受託して取引する場合に用いられる。
指値は拘束価格の指示であり、委託者は指値に従わない売買についてその結果の引受けを否認できる。
サブリース
賃借人が第三者にさらに賃貸することであるが、特に、住宅の管理を手がける事業者が賃貸住宅の所有者から住宅を一括して賃借し、それを入居者にさらに賃貸するという賃貸住宅経営の方法をいうことが多い。
この場合、一括して賃借する事業者を、サブリース事業者という。
賃貸住宅の所有者は、賃借人の募集、家賃の設定や改定、住宅の管理などの業務に責任を負うことなく賃貸料を得ることができるが、サブリース事業者とのリスク分担や空室の取扱いなどについて明確にしておく必要がある。
なお、サブリース業者との契約更新の際、協議不成立等で、契約解除のリスクもあることも注意しなければならない。
3,000万円特別控除
譲渡所得の課税において、譲渡益から3,000万円を控除して課税する制度をいう。
個人が、居住用財産(自ら居住している土地・建物)を譲渡して譲渡利益が生じた場合に、この譲渡利益に対する所得税の課税に当たって、譲渡利益から3,000万円(譲渡利益が3,000万円未満のときはその額)を控除して譲渡所得を計算する特別の措置である。この特例が適用されるのは、住まなくなった日から3年目の年末までに譲渡した場合である。
また、相続した空き家を譲渡した場合にも、3,000万円特別控除が適用される。
私道
民間の個人や法人が所有している道路を「私道」という。
「私道」には、特定の個人のために築造されたものもあれば、不特定多数の人が通行するために築造されたものもある。
「私道」は一定の手続きを経ることによって「建築基準法上の道路」になることができる。
この手続きは「道路位置指定」と呼ばれている。
司法書士
不動産の権利に関する登記の専門家。
不動産登記簿の「甲区」および「乙区」に登記すべき事項について、登記申請者から依頼を受けて登記申請書の作成を行ない、登記申請者の代理人として登記の申請を代理する。
また、会社の設立登記や役員変更の登記などの商業登記についても、不動産登記と同様に申請書を作成し、申請を代理することができる。
その他に、本人が行なう訴訟のための訴訟書類の作成援助、契約書の作成と助言も司法書士の業務とされている。
また司法書士法の改正により2003年4月1日以降は、簡易裁判所における訴訟手続きの代理、裁判外での和解の代理なども司法書士の業務に加えられた。
修繕積立金
管理組合が長期修繕計画に従って修繕を実施するために、区分所有者から毎月徴収した金銭を積み立てたものである。
区分所有者は、管理組合に対して、通常、管理費と特別修繕費を納入するが、この特別修繕費を毎月積み立てたものが「修繕積立金」である。
この修繕積立金は、管理費と混同しないように、管理費とは別に経理することが管理規約において定められていることが多い。
金額については、各区分所有建物の築年数等によって異なる。
地震保険
地震による被災損失に対して補償する損害保険。火災保険契約等に付帯する形で付保され、「地震保険に関する法律」によって保険会社等が負う地震保険責任を政府が再保険している。
保険の対象は住宅および生活用動産に限られ、保険事故は地震・噴火・津波を原因とする火災・損壊・埋没・流出による全損・半損・一部損である。
保険補償の範囲は、主契約の保険金額の30~50%の範囲内で、建物5,000万円、家財1,000万円を上限とする。
保険料は、建物の構造と所在地に応じて決定される。建物の構造は木造と非木造に区分され、所在地は都道府県別に区分されている。
詳細は損害保険代理店へお問合せください。
自筆証書遺言
自筆証書遺言は自分で紙に書き記す遺言書のことで、最低限の紙、ペンと印鑑だけでもあれば、誰でも気軽に作成が可能で費用もかからないのです。
そのため、遺言書としては一般的には、一番多く利用されています。 ただし、書き間違えや遺言内容が曖昧で遺言書として無効になってしまったということがとても多いので注意が必要な遺言書方法となります。心配なかたは、司法書士等の先生に相談することが良いでしょう。
住宅インスペクション
既存住宅を対象に、構造の安全性や劣化の状況を把握するために行なう検査・調査をいう。日本語の「住宅」と英語のInspection(検査)を組み合わせた造語である。
住宅インスペクションは、目視等を中心とした現況把握のための検査、耐震診断等の破壊調査を含めた詳細な調査、性能向上等のための調査など、目的に応じて異なった内容で実施される。
既存住宅の売買に当たっては、現況把握のための検査が実施されるが、そのためのガイドラインとして「既存住宅インスペクション・ガイドライン」(2013年、国土交通省)が公表されている。同ガイドラインの概要は次のとおりである。
1)インスペクションは、検査対象部位について、目視、計測を中心とした非破壊による検査を基本にして、構造耐力上の安全性、雨漏り・水漏れ、設備配管の日常生活上支障のある劣化等の劣化事象を把握する方法で行なう。
2)業務の受託時に契約内容等を検査の依頼人に説明し、検査結果を書面で依頼人に提出する。
3)検査を行なう者は、住宅の建築や劣化・不具合等に関する知識、検査の実施方法や判定に関する知識と経験が求められ、住宅の建築に関する一定の資格を有していることや実務経験を有していることが一つの目安になる。
4)公正な業務実施のために、客観性・中立性の確保(例えば、自らが売り主となる住宅についてはインスペクション業務を実施しないなど)、守秘義務などを遵守する。
また、建物状況調査における人材育成等による検査の質の確保・向上等を進めるため、「既存住宅状況調査方法基準」(2017年、国土交通省)が定められ、それに従ってインスペクションを実施するための「既存住宅状況調査技術者講習」が制度化された。
同基準は、既存住宅状況調査は既存住宅状況調査技術者講習を終了した建築士が行なうこと、調査は、構造耐力上主要な部分及び雨水の浸入を防止する部分に係る調査として、調査対象住宅の構造に応じて規定する劣化事象等をそれぞれ定める方法により調査することなどを定めている。
なお、宅地建物取引業法に基づき、宅建業者は、1)既存住宅の媒介契約に当たって交付する書面に、建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項を記載しなければならず、2)重要事項説明に当たって、建物状況調査に実施の有無及びその結果の概要を説明しなければならないとされているが(2018年4月1日から適用)、この場合の建物状況調査は、建築士又は国土交通大臣が定める講習を終了した者が実施する者に限定されている。
生前贈与
存命中に自分の財産を他人に与えることであるが、通常は、相続の前倒しとして行なう贈与をいう。
贈与を行なったときには、贈与を受けた者に対して贈与税が課せられる(毎年110万円までは非課税)。一方、相続した場合に課せられる相続税は、贈与税よりも税率が低い。そこで、存命中に被相続予定者等に対して財産を分与する必要に応えるために、一定の要件を満たす贈与財産について、相続時にその贈与財産も相続財産と同様に取り扱う制度(相続時精算課税制度)が創設された(2003(平成15)年)。この制度に従ってなされる贈与が、生前贈与である。
また、直系尊属からの住宅取得等資金の贈与等については一定額まで贈与税が非課税となるが、この制度による贈与も生前贈与である。
なお、贈与税の課税においてどのような贈与が特別扱いの対象となるかなどについては、具体的な事例に則して十分に確認する必要がある。
詳細は、お近くの税理士に相談すると良い。
正当事由
土地・建物の賃貸借契約において、賃貸人が契約の更新を拒絶したり、解約の申し入れをする際に必要とされる「事由」をいう。
一般的に、賃貸借契約は、期間の満了や解約の申し入れによって特段の理由を必要とせずに終了するが、土地・建物の賃貸借については、賃借人保護のために、更新拒絶等に当たって「正当事由」を要するとされているのである(強行規定であり、これに反する契約条項は無効となる。1941(昭和16)年施行)。
何が正当事由となるかは、裁判での判断に委ねられていて、多数の判例があるが、規定の趣旨に照らせば、借地・借家人に有利になる傾向があるのは当然である。判例を受けて、現在の借地借家法では、正当事由は、貸主・借主が土地・建物の使用を必要とする事情、賃貸借に関する従前の経緯、土地・建物の利用状況、立退料の提供などを考慮して判断するとしている。
正当事由がないと土地・建物の賃貸借を終了することができないという規定は、借地や貸家の供給を妨げかねないという意見も強く、最近、一定の要件に該当する場合には、契約の更新を認めないという特約を結ぶことも可能とするよう法律が改正された(土地については1992(平成4)年8月、建物については2000(平成12)年3月から施行)。そのような特約付きの賃借権が、定期借地・借家権等である。
成年被後見人
精神上の障害があるために、後見人を付けられた者のこと。
精神上の障害により物事を判断する能力が欠如した状態にある者について、家庭裁判所は、本人・配偶者・親族などの請求にもとづいて審判を行ない、「後見開始」の決定をし、「後見人」を職権で選任する(民法第7条、第843条)。
こうした手続きにより後見人を付けられた者のことを「成年被後見人」と呼ぶ。
また、成年被後見人に付けられる後見人は「成年後見人」と呼ばれる。この「成年被後見人」の制度は、2000(平成12)年の民法改正によって創設されたもので、それ以前は「禁治産者」という名称であった。
成年被後見人は法律行為を有効に行なうことができないものとされているので、どんな法律行為でも原則的に後で取り消すことが可能である(ただし日用品の購入などは有効に自分で行なうことができる)(民法第9条)。
従って、成年被後見人との契約を行なうには、その成年後見人を代理人として契約を行なうべきである(民法第859条)。
後見開始等の相談・手続きは司法書士に相談すると良い。
セットバック
1. 建物の上部を下部よりも後退させること。
2. 2項道路(建築基準法第42条第2項の規定により道路であるものとみなされた幅4m未満の道のこと)に面する土地では、次の1)または2)の範囲に建物を建築することができない。
1)その道路の中心線から水平距離2mの範囲
2)その道路の片側が崖地、川、線路等である場合には、その崖地等の側の道路境界線から水平距離4mの範囲
すなわち、2項道路はその幅が4m未満であり、そのままでは防火等の面(消防用自動車等が進入できないなど。)で十分な道の幅を確保することができないので、2項道路を含めて4mの範囲内には、建築物や塀などを造ることを禁止し、4mの空間を確保しようという趣旨である。
その結果、2項道路に面する土地では、自分の土地でありながら、一定の部分には建築をすることができないこととなる。これを不動産業界ではセットバックと呼んでいる(セットバックとは英語で「後退」という意味である)。
専有部分
分譲マンションなどの区分所有建物において、それぞれの区分所有者が単独で所有している建物の部分のことを「専有部分」と呼ぶ(区分所有法第1条・第2条)。
分譲マンションの場合でいえば、各住戸の内部が「専有部分」に該当する。
この反対に、区分所有建物において区分所有者が全員で共有している部分(例えば廊下・階段・バルコニーなど)は「共用部分」と呼ばれる。
相続
死亡した者の有した財産上の一切の権利義務を、特定の者が包括的に承継することをいう。
相続は、死亡のみによって、意思表示を要せず一方的に開始される。
ただし、遺言により相続の財産処分について生前に意思を明らかにし、相続に反映させることができるが、この場合には、遺留分の制約がある。
財産の継承者(相続人)は、1.子・直系尊属・兄弟姉妹がこの順で先順位の者が(同順位者が複数あるときには共同して均等に)、2.配偶者は1.の者と同順位で常に、その地位を得る。子・兄弟姉妹の相続開始前の死亡や相続欠格等の場合には、その者の子が代わって相続人となる(代襲相続)。
また、相続人は、相続の開始を知ったときから3ヵ月以内に、相続の承認、限定承認、相続放棄のいずれかの意思表示が必要である(意思表示がないときには相続の承認とみなされる)。
遺言の指定がないときの相続分(法定相続分)は、1)配偶者と子のときには、配偶者2分の1、子2分の1、2)配偶者と直系尊属のときには、配偶者3分の2、直系尊属3分の1、3)配偶者と兄弟姉妹のときは、配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1である。
なお、法定相続分は遺言がない場合の共同相続人の権利義務継承の割合を定めたもので、遺産分割は相続人の協議等によってこれと異なる割合で行なうことができる。
尊属(直系尊属)
親族関係のうち、ある人を基準にして先の世代にある血族をいう。血族とは血縁者のことであるが、民法では養子縁組によって生まれる親族も血族として扱う。例えば、父母・祖父母など(直系尊属)や、おじ・おばなど(傍系尊属)が尊属である。
尊属という概念が法的に重要だったのは、刑法で尊属殺を一般の殺人よりも重い刑に処するとされていたからであるが、その規定は違憲とされ(1973年4月4日最高裁判決)、削除されている。
なお、後の世代の血族を卑属という。(直系卑属)
造作買取請求権
借家契約の終了の際、借家人が建物に付加した造作物を家主に時価で買い取らせることのできる権利をいう。
造作物とは、畳、建具、電気・水道施設などをいい、その付加について家主の同意を得ていることが必要である。
民法の原則では、賃貸借契約の終了時には賃借人が付加した造作を収去しなければならないとされているが、造作買取請求権は、借家契約における例外規定である。ただし、造作の買取り義務を負わないよう契約上特約することができる(任意規定である)。
一般的な契約では、この造作買取請求権は特約で排除されている。
なお、造作買取請求が正当で有効である場合に、家主が代金を支払わない間は、同時履行の抗弁権(双務契約において相手方が債務を履行するまでは自分の債務を履行しないと主張する権利)によって、家屋の明渡しを拒絶される恐れがある。
贈与税
贈与税の課税方法には、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがある。いずれの方法の場合にも、財産の被贈与者が申告、納税しなければならない。
1.暦年課税
1月1日から12月31日までの1年間に贈与された財産の合計額に対して課税する方法
この場合、基礎控除額は110万円で、これを超える額に対して累進的な税率(基礎控除額を超える額に応じて10~50%、2015(平成27)年以降は最高税率55%)によって課税される。
2.相続時精算課税
あらかじめ選択した一定の要件に該当する贈与者ごとに、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の価額の合計金額から2,500万円の特別控除額を控除した残額に対して課税する方法
この場合、前年以前にこの特別控除の適用を受けた金額がある場合には、2,500万円からその金額を控除した残額がその年の特別控除限度額となる。また、相続発生時に、相続時精算課税された相続税と相続した財産に係る相続税とを通算して税額の精算が行なわれる。
相続時精算課税において控除額を超える額に対する課税税率は、一律20%である。
詳細はお近くの税理士に相談すると良い。
た行
耐火建築物
建築基準において、その主要構造部(壁、柱、床、梁、屋根、階段)が耐火性能を満たし、かつ、延焼の恐れのある開口部(窓やドア)に防火戸など火災を遮る設備を有する建築物をいう。
この場合に、耐火性能を満たすというのは、
1.主要構造部が耐火構造であること
2.屋内で発生する火災、および周囲で発生する火災による火熱に、当該火熱が終了するまで耐えることができるとする技術基準で定める性能(構造耐力、上昇温度などに関する一定の要件)に適合すること
である。
一定の特殊建築物や、都市計画で定められた防火地域内の一定の建築物は、耐火建築物としなければならない。
宅地建物取引業
宅地建物取引業とは「宅地建物の取引」を「業として行なう」ことである(法第2条第2号)。
ここで「宅地建物の取引」と「業として行なう」とは具体的には次の意味である。
1.「宅地建物の取引」とは次の1)および2)を指している。
1)宅地建物の売買・交換
2)宅地建物の売買・交換・賃借の媒介・代理
上記1.の1)では「宅地建物の賃借」が除外されている。このため、自ら貸主として賃貸ビル・賃貸マンション・アパート・土地・駐車場を不特定多数の者に反復継続的に貸す行為は、宅地建物取引業から除外されているので、宅地建物取引業の免許を取得する必要がない。
またここでいう「宅地」とは、宅地建物取引業法上の宅地を指す(詳しくは「宅地(宅地建物取引業法における~)」を参照のこと)。
2.「業として行なう」とは、宅地建物の取引を「社会通念上事業の遂行と見ることができる程度に行なう状態」を指す。具体的な判断基準は宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方の「第2条第2号関係」に記載されているが、主な考え方は次のとおりである。
1)取引の対象者
広く一般の者を対象に取引を行なおうとするものは事業性が高く、取引の当事者に特定の関係が認められるものは事業性が低い。
2)取引の反復継続性
反復継続的に取引を行なおうとするものは事業性が高く、1回限りの取引として行なおうとするものは事業性が低い。
宅地建物取引業協会
宅地建物取引業者が設立した業界団体の一つで、都道府県ごとに設立されている。
業界団体の設立は本来自由であるが、宅地建物取引業法は、宅地建物取引業の適正な運営の確保と健全な発達を図るため、宅地建物と取引者が各都道府県ごとに「宅地建物取引業協会」と称する社団法人を設立することができるとし、併せて全国を単位とする宅地建物取引業連合会および名称使用制限を設けている(同法74・75条)。
宅地建物取引業法
宅地建物取引の営業に関して、免許制度を実施し、その事業に対し必要な規制を定めた法律。1952年に制定された。
この法律に定められている主な内容は、宅地建物取引を営業する者に対する免許制度のほか、宅地建物取引士制度、営業保証金制度、業務を実施する場合の禁止・遵守事項などである。これによって、宅地建物取引業務の適正な運営、宅地および建物の取引の公正の確保および宅地建物取引業の健全な発達の促進を図ることとされている。
宅地建物取引業保証協会
宅地建物取引業により生じた債権の弁済(弁済業務)、債務の連帯保証(一般保証業務)、苦情の解決、研修などを行なう社団法人(現在は、公益社団法人または一般社団法人)で、国土交通大臣の指定したものをいう。
その社員は、営業保証金の供託を必要としないかわりに、弁済業務保証金分担金(主たる事務所につき60万円、その他の事務所につき事務所ごとに30万円)を納付しなければならない。
現在指定を受けているのは、(社)全国宅地建物取引業保証協会および(社)不動産保証協会の2つの団体である。
宅地建物取引士
宅地建物取引士資格試験に合格し、都道府県知事の登録を受けて、宅地建物取引士証の交付を受けた者のこと。
宅地建物取引士は、一定以上の知識・経験を持つ者として公的に認められた者である。宅地建物取引業者は、事務所ごとに従事者5名に対して1名以上の割合で、専任の宅地建物取引士を置かなければならない。
宅地建物取引において特に重要な次の3つの業務は、宅地建物取引士だけが行なうことができるとされている(宅地建物取引士ではない者はこれらの業務を行なうことができない)。
1.重要事項説明
2.重要事項説明書への記名・押印
3.37条書面への記名・押印
宅地建物取引士となるためには、具体的には次の1)から5)の条件を満たす必要がある。
1)宅地建物取引士資格試験に合格すること
宅地建物取引業に関して必要な知識に関する資格試験である宅地建物取引士資格試験に合格することが必要である。なお、一定の要件を満たす者については宅地建物取引士資格試験の一部免除の制度がある。
2)都道府県知事に登録を申請すること
この場合、宅地建物取引に関して2年以上の実務経験を有しない者であるときは、「登録実務講習」を受講し修了する必要がある。
3)都道府県知事の登録を受けること
登録を受けるには一定の欠格事由に該当しないことが必要である。
4)宅地建物取引士証の交付を申請すること
宅地建物取引士証の交付を申請する日が宅地建物取引士資格試験に合格した日から1年を超えている場合には、都道府県知事の定める「法定講習」を受講する義務がある。
5)宅地建物取引士証の交付を受けること
氏名、住所、生年月日、有効期間の満了する日等が記載されている宅地建物取引士証の交付を受けて初めて正式に宅地建物取引士となる。
宅地建物取引士は、宅地建物の取引の専門家として、購入者等の利益の保護および円滑な宅地建物の流通に資するよう公正誠実に業務を処理するほか、信用・品位を害するような行為をしないこと、必要な知識・能力の維持向上に努めることとされている。
短期譲渡所得
所有期間が5年以下の土地・建物の譲渡に係る所得のこと、所有期間は譲渡した年の1月1日現在で算定する。
これに対する所得税額は、次のように算出される。
「短期譲渡所得金額=譲渡価額 −(取得費+譲渡費用)−特別控除」
「税額=短期譲渡所得金額×税率」
税率は、原則として、所得税30%、住民税9%である。ただし、一定の要件を満たす居住用財産の譲渡については3,000万円の特別控除が適用されるなどの特例がある。
第三者のためにする契約
当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約する契約をいう。
第三者の権利は、その者が受益の意思表示をしたときに生じることとなる。
第三者のためにする契約は、中間省略登記を合法的に行なうための手法の一つとして利用されている。この場合には、
1.第三者のためにする売買契約(A→B、所有権は直接Cに移転する特約付き)
2.他人物売買契約(B→C、Aの所有権をCに移転)
という2つの契約を締結する。これにより、A→B→Cという譲渡をA→Cと登記することができるとされる。
なお、宅地建物取引業者は、原則として他人物売買契約の締結が禁止されているが、第三者のためにする売買契約が締結されている場合などは例外とされる。
代襲相続
被相続人の子または兄弟姉妹が、相続開始前に死亡などによって相続できないときに、その者の子が、その者に代わって相続することをいう。代わって相続する者が「代襲者」である。民法に定められている制度である。
また、代襲者が相続開始前に死亡などによって相続できないときも、代襲者の子は代襲者に代わって相続できる。これを「再代襲」という。
代襲者の相続分は被代襲者の相続分と同じで、代襲者が複数いるときにはそれを均等に相続する。
代償分割
共同で相続した遺産を分割する方法のひとつで、協議によって遺産を特定の者が取得し、他の相続人に対しては代償金を支払う方法を言う。
相続した不動産などは、物理的に分割することが困難・不利益で、共有物にすると管理に支障が生じる恐れがあることなどから、代償分割によって相続されることが多い。
なお、共同相続遺産を分割する主な方法には、代償分割のほか、現物のままでそれぞれの遺産ごとに取得者を決める方法(現物分割)、遺産を売却してその収益を分け合う方法(換価分割)がある。
諾成契約
当事者の合意の意思表示のみで成立する契約。
民法は、基本原則として、契約は締結の申込みに対して相手方が承諾したときに成立する旨を規定し、売買契約、賃貸借契約などほとんど全ての契約について諾成契約としている。
また、契約の成立には、法令による特別の定めがない限り書面の作成などの方式を備える必要はなく、任意の意思表示で足りる。
団体信用生命保険
生命保険の類型の一つで、住宅ローン債務者を被保険者、債権者を契約者および保険金受取人とする生命保険契約をいう。
住宅ローンの借入者が債務返済中に事故によって借入金の返済不能に陥ったときに、その弁済を保険によって行なうことにより、住宅ローンの担保となっている土地・住宅に対する担保権の実行(当該土地・住宅の売却等)を回避することができる。
この契約は、ローンの貸出者と保険会社との間で締結されるもので、住宅ローン契約の際にその加入が必要条件とされることがあるほか、クーリングオフが適用されないこと、保険会社に対して告知が必要となることがあるなどの注意が必要である。
一般的には、略して「団信」と呼ぶことも多い。
地価公示
最も代表的な土地評価である地価公示は、地価公示法にもとづき、国土交通省土地鑑定委員会が毎年3月下旬に公表する土地評価である。
地価公示では全国で選定された3万数千地点の「標準地」について、毎年1月1日時点を基準日として各標準地につき2名以上の不動産鑑定士等の鑑定評価を求め、その正常な価格を土地鑑定委員会が判定し、毎年3月下旬に公示する。この公示された価格を「公示地価」という。
地価公示によって評価された公示地価は、一般の土地取引価格の指標となるだけでなく、公共用地の取得価格の算定基準ともなっている。
☆関連サイト☆
https://www.land.mlit.go.jp/webland/
地区計画
都市計画おいて、それぞれの区域の特性にふさわしい良好な環境の街区を形成するために決定された計画をいう。
1.趣旨
都市計画法では適正な土地利用を実現するために、用途地域・特別用途地区をはじめとする多様な地域地区の制度を設けているが、都市化の進展の中で、不良な環境の地区が形成される恐れのあるケース等では、地域地区などの規制だけでは対応できない可能性がある。
そこで、特定の地区について土地利用規制と公共施設整備(道路、公園などの整備)を組み合わせてまちづくりを誘導する制度が必要となった。このような目的のために1980年に創設されたのが、地区計画制度である。
2.地区計画の決定
地区計画は都市計画の一つであるので、都市計画の決定手続により市町村が決定する。
具体的には次の1)または2)に該当する土地の区域について地区計画が定められる。
1)用途地域が定められている土地の区域
2)用途地域が定められていない土地の区域のうち次のいずれかに該当するもの
ア.市街地の開発などの事業が行なわれる、または行なわれた土地の区域
イ.建築物の建築・敷地の造成が無秩序に行なわれ、または行なわれると見込まれる土地の区域で、公共施設の整備の状況などから見て不良な街区の環境が形成される恐れがあるもの
ウ.優れた街区の環境が形成されている土地の区域
3.地区計画の内容
地区計画に関する都市計画では、地区計画の種類、名称、位置、区域、面積の他、次の事項を定める。
1)地区計画の目標
2)区域の整備、開発および保全に関する方針
3)地区整備計画(詳しくは4.を参照)
4)再開発等促進区(詳しくは下記5.を参照)
4.地区整備計画
地区整備計画とは、地区施設(主として街区内の居住者等の利用に供される道路・公園・緑地・広場などの施設のこと)、建築物等の整備、土地の利用に関する計画である。
地区整備計画では道路・公園などの整備、建築物等の用途制限、容積率の制限、建ぺい率の制限、敷地面積の最低限度などを詳細に規定することが可能である。従って、地区整備計画はまちづくりのプランであるということができる。
なお、地区計画に関する都市計画では、地区整備計画を定めることができない特別の事情がある場合には、地区計画の区域の全部または一部について、地区整備計画を定めなくてもよいものとされている。地区計画の区域の一部についてのみ地区整備計画を定める場合は、その一部区域をも都市計画に定める必要がある。
5.再開発等促進区
地区計画の区域の内部において、市街地の再開発等を進める場合には、地区計画に関する都市計画において再開発等促進区を定めることができる。再開発等促進区では特別な事項をも定めるものとされている。
6.地区計画の区域内における届出制度
地区整備計画が定められている地区計画の区域では、土地の区画形質の変更、建築物の建築を行なう場合には、その行為に着手する日の30日前までに市町村長に届け出なければならない。
また地区整備計画において、用途の制限、建築物等の形態の制限、建築物等の意匠の制限が規定されている場合には、それらを変更する行為も30日前の届出が必要である。
知事免許
宅地建物取引業者が、都道府県知事から免許を受けていること。
宅地建物取引業を営もうとする者が、一つの都道府県内においてのみ事務所を設ける場合には、その都道府県の知事から免許を受けることが必要とされている(宅地建物取引業法第3条第1項)。
この免許がなければ、宅地建物取引業を営むことができない。
※国土交通大臣免許を除く。
この規定にもとづき、都道府県知事から免許を受けることを、一般的に「知事免許」と呼んでいる。
地上権
建物や工作物を所有する目的で、他人の土地を使用する権利のこと(民法第265条)。
土地賃借権と地上権は非常によく似ているが、次のような違いがある。
1.土地賃借権は債権だが、地上権は物権である
2.地上権は、土地所有者の承諾がなくても、他人に譲渡することができる。
3.地上権を設定した土地所有者には登記義務があるので、地上権は土地登記簿に登記されているのが一般的である。
地積測量図
土地の表示登記や分筆登記を申請する際に、土地家屋調査士が作成し、登記所へ提出する書面。
正確な測量技術により土地の面積、土地の形状が記載されている。
地番
土地登記簿の表題部に記載されている土地の番号のこと(不動産登記法第79条)。
民有地には地番が付されているが、公有地は無番地であることが多い。
なお、分筆された土地の場合には、原則として分筆の旨を示す記録・記号が付けられている。
地目
登記所の登記官が決定した土地の主な用途のこと。
土地登記簿の最初の部分(表題部という)には、土地の所在、地番、地目、地積(土地面積)が記載されている。
地目は、現況と利用状況によって決められることになっており、次の23種類に限定されている。
田、畑、宅地、学校用地、鉄道用地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、墓地、境内地、運河用地、水道用地、用悪水路、ため池、
堤、井溝、保安林、公衆用道路、公園、雑種地。
仲介手数料
宅地建物取引業者の媒介により、売買・交換・貸借が成立した場合に、宅地建物取引業者が媒介契約にもとづき、依頼者から受け取ることができる報酬のこと。
宅地建物取引業法により、報酬額の制限あり。
長期修繕計画
分譲マンションの性能を維持し老朽化を防止するために、管理組合が作成する分譲マンションの長期的な修繕計画のことである。
長期修繕計画は、一般的に10年から30年程度の期間を対象として、マンションの各箇所に関する鉄部等塗装工事・外壁塗装工事・屋上防水工事・給水管工事・排水管工事などの各種の大規模修繕をどの時期に、どの程度の費用で実施するかを予定するものである。
1999(平成11)年度の建設省(現・国土交通省)の「マンション総合調査」によると、これらの大規模修繕のうち新築後5~6年で実施率が高まるのが鉄部等塗装工事である。
また新築後9~10年では外壁塗装工事と屋上防水工事の実施率が高まり、給水管工事・排水管工事は新築後15年以降に実施率が上昇する。
ただしマンションの建築・設備の仕様によってこれらの時期は大きく変化する。
長期修繕計画ではこうした大規模修繕の実施時期を定めるだけでなく、その費用についても収支計画を定めるのが望ましい。
大規模修繕の費用は原則として「修繕積立金」をとり崩すことで賄われる。また、マンションの管理規約により「駐車場収入の剰余金」が「修繕積立金」に組み入れられる場合も多い。
しかしこれらの収入だけでは大規模修繕の費用をまかなうのに十分ではないケースが非常に多いので、各大規模修繕の実施時期において、費用の不足分を各戸から一時金として徴収することも計画に組み込んでおく必要がある。
このように長期修繕計画は、分譲マンションの管理運営上非常に重要な事項であるので、通常は管理規約において長期修繕計画の作成を管理組合に義務付けている場合が多い。
ちなみに、国土交通省が作成した管理規約のモデルである中高層共同住宅標準管理規約では、次のような旨の規定を設けて、長期修繕計画の位置付けを明確化している。
1.長期修繕計画の作成は、管理組合の業務である(単棟型規約第31条)。
2.管理組合の理事会は、長期修繕計画の案を作成する(単棟型規約第52条)。
3.長期修繕計画を作成するには、集会の決議を行なう必要がある(単棟型規約第46条)。
4.修繕積立金は、一定年数の経過ごとに計画的に行なう修繕などに限って支出することができる(単棟型規約第27条)。
長期譲渡所得
税務上、所有期間が5年を超える土地・建物の譲渡に係る所得のこと、所有期間は譲渡した年の1月1日現在で算定する。
これに対する所得税額は、次のように算出される。
「長期譲渡所得金額=譲渡価額 −(取得費+譲渡費用)−特別控除」
「税額=長期譲渡所得金額×税率」
税率は、原則として、所得税15%、住民税5%である。ただし、一定の要件を満たす居住用財産の譲渡については3,000万円の特別控除および軽減税率(所得金額6,000万円までは10%)が適用されるなどの特例がある。
賃貸住宅管理業者登録制度
賃貸住宅管理を業務として行なう者を登録する制度をいう。
国土交通省の告示に基づくもので、業者に登録の義務はないが、登録によって、事業者情報が開示されるほか、業務ルールの徹底などの効果が期待できる。
登録した賃貸住宅管理業者は、毎年、財産の分別管理等の状況を報告しなければならない。
また、国土交通省が定めた賃貸管理業務に関するルール(賃貸住宅管理業務処理準則)を遵守する義務を負う。同準則には、重要事項の説明、業務の一括再委託の禁止、財産の分別管理、秘密の保持等が規定されている。
賃貸住宅管理業務処理準則
賃貸住宅管理を業務として行なう場合に基準となるルール。
国土交通省の告示に基づくもので、賃貸住宅管理業者として登録した事業者はこれを遵守する義務を負っている。
同準則が定める主要ルールは次の通りである。
(1)禁止行為
・不実告知、不確実事項に関する断定的判断の提供、重要事実の不告知等
・費用その他についての誇大広告等
(2)重要事項の説明・書面交付の義務
・賃貸人に対して:管理受託契約の内容(業務の内容・実施方法、費用、再委託、免責などに関する事項)等
・賃借人に対して:管理業務の内容・実施方法等
(3)管理業務の方法
・基幹業務についての一括再委託の禁止
・家賃等の分別管理義務
・賃貸人に対する事務報告義務
・業務に関して知り得た秘密を漏らさない義務
賃貸不動産経営管理士
賃貸住宅の管理に関する知識・技能・倫理観を有することを証する資格。
国家資格ではない。
賃貸不動産経営管理士は、(一社)賃貸不動産経営管理士協議会が実施する試験に合格し、登録することによって認定される。登録に当たっては、宅地建物取引士であること、または賃貸不動産関連業務に従事する経験があること。が要件とされている。
なお、賃貸住宅管理業者は、賃貸住宅管理業者登録制度(国土交通大臣による告示で制定)における登録の際には、賃貸不動産経営管理士を置かなければない。
また賃貸住宅管理に関する重要事項説明などの業務に当たる「実務経験者等(資格試験合格者もしくは6年以上の実務経験者)」のひとつに認定されている。
追認
効果のない法律行為について、その効果を生じさせる意思表示をいう。
一定の場合にのみ認められる(通常は、新たな法律行為が必要である)。
その場合とは、次の4つである。
1.無権代理人の法律行為について、本人の意思表示で本人について効果が生じる。
2.無効の法律行為について、当事者が無効であると知ったうえで追認すれば、そのとき新たな行為をしたとみなされる。
3.取り消すことのできる行為を一方的な意思表示によって確定的に有効とする。
4.訴訟能力等を欠いている場合の訴訟行為について、能力を得た後の追認によって行為のときに遡って効力が生じる。
通謀虚偽表示
本人が相手方と通じて、虚偽の意思表示をすることをいう。
例えば、本人も相手方も土地の売買契約を締結するつもりがまったくないのに、お互いに相談のうえで、土地の売買契約を締結したかのように見せかける場合が、この虚偽表示に該当する。
このような虚偽表示は、本人の有効な内心的効果意思を欠くので、原則として無効となる(民法第94条第1項)。
例えばAが土地を売る意思がなく、Bが土地を買う意思がないのに、相談のうえで仮装の土地売買契約を締結し、土地の所有名義をAからBに移したという場合には、AB間ではこの土地売買契約は無効である。従ってAは、この土地の所有名義をBからAへ戻すように、Bに対していつでも主張することができる。
しかしながら、上記の例で土地の所有名義をAからBに移した間に、Bが所有名義が自分にあることを利用してこの土地を事情を知らない第三者Cに売却してしまった場合には、この善意の(=事情を知らない)第三者は保護されるべきである。
そこで民法ではこうした善意の第三者を保護する規定として民法第94条第2項を置いている。
つなぎ融資
住宅・宅地の取得資金や工事代金に充てるため、公的な融資が実行されたり、不動産の売却代金を得るまでの間、一時的に資金を借りることをいう。
金融機関により融資条件はさまざまであるが、短期融資として取り扱われる。
公的融資の実行は土地・建物の登記後とされ、登記は決済後でないとできないため、つなぎ融資が必要となるケースは多い。また、住宅の買い換えなどの際にも、購入の後に売却することが多く、同時決済などの便宜を得ない限りはつなぎ融資が必要である。
津波災害警戒区域
津波が発生した場合に住民等の生命又は身体に危害が生ずる恐れがあり、津波による人的災害を防止するために警戒避難体制を特に整備すべきとして指定された土地の区域をいう(津波防災地域づくりに関する法律)。
指定は、国土交通大臣が定める基本指針に基づき、津波浸水想定を踏まえて、都道府県知事が行なう。
津波警戒区域内では、津波の発生時における避難施設の指定など、警戒避難のために必要な措置が講じられる。
また宅地建物取引業者は、対象不動産が津波災害警戒区域内であるかどうかを重要事項として説明しなければならない。
津波災害特別警戒区域
津波災害警戒区域のうち、津波が発生した場合に建築物が損壊し、又は浸水し、住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずる恐れがあると認められ、一定の開発行為および一定の建築物の建築又は用途の変更の制限をすべきとして指定された土地の区域をいう。
指定は、国土交通大臣が定める基本指針に基づき、津波浸水想定を踏まえて、都道府県知事が行なう。
津波災害特別警戒区域内では、特に防災上の配慮を要する者が利用する一定の施設等を建築するための開発行為や同施設等の建築(用途変更を含む)について、都道府県知事等の許可を得なければならない。
また宅地建物取引業者は、対象不動産が津波災害特別警戒区域内であるかどうかを重要事項として説明しなければならないほか、区域内であるときにはそれに伴う開発・建築行為の制限についても説明しなければならない。
2×4(ツーバイフォー)工法
北米で生まれた木造建築の工法。わが国における正式名称は「枠組壁工法」である。
断面が2インチ×4インチの木材を使用することから、このような名称が付けられた。
このツーバイフォー工法の最大の特徴は、木材で組んだ「枠組」に構造用合板を打ち付けることで、構造全体の強度を得ることである。
定期借家契約
契約期間の満了によって賃貸借関係が確定的に終了する借家契約。借地借家法に基づく契約である。
一般の借家契約は、借主を保護するために、貸主は正当事由がない限り契約の更新を拒絶できないとされているが、定期借家契約においてはそのような制約がない。
定期借家契約を締結するには、次の要件を満たさなければならない。
1)契約期間を確定的に定めること
2)公正証書による等、書面によって契約すること
3)貸主が借主に対して、契約の更新はなく期間の満了とともに契約が終了することを、あらかじめ書面(契約書ではないもの)を交付して説明すること
中途解約の可否等は特約で定めることとなるが、やむを得ない事情により生活の本拠として使用することが困難となった借家人(床面積が200平方メートル未満の住宅に居住している借主に限る)は、特約がなくても中途解約ができる。また、契約を延長する場合は、当事者双方の合意による再契約が必要である。
また、契約は期間の満了によって終了するが、期間が1年以上の場合は、賃借人に対して、期間満了の1年前から6ヵ月前までの間(通知期間)に契約が終了する旨を通知しなければならない。
ただし、通知期間後に契約終了の旨を通知すれば、通知後6ヵ月を経過したあとは契約の終了を強制できる。
定期借家契約は契約更新が無い契約であるから、契約を延長する場合は、当事者双方の合意による再契約が必要である。
なお、賃料の改訂に関して特約があれば、借地借家法に定める家賃増減請求権の規定(契約条件にかかわらず、税負担等の増減、経済事情の変動、近傍家賃との不相応による家賃改訂を請求することができる旨の規定)は適用されない。
定期建物賃貸借
契約の更新がないことを特約した建物の賃貸借をいう。
「定期借家」ともいう。
通常の建物賃貸借契約は、その更新拒絶や解約に際して正当事由が必要とされ、賃貸借関係が長期化しやすい。そこで、借家の供給を容易にするなどのため、2000(平成12)年3月から、賃貸借期間を定めその後期間の更新をしない旨の特約をすることが認められた。この契約による賃貸借が、定期建物賃貸借(定期借家)である。
定期建物賃貸借契約を締結するには、貸主はあらかじめその旨を書面で借主に説明しなければならず、契約は公正証書による等書面でしなければならない。
また、契約期間の終了に当たっては、期間満了の1年前から6月前までの間に賃借人に対し契約が終了する旨の通知をしなければならないとされている(その後の通知については、通知後6月の経過で契約を終了できる)。
停止条件
法律行為の効果の発生が、将来の不確実な事実にかかっているときの、当該事実をいう。
例えば、「宅建試験に合格したら時計をあげる」と約束した場合の「合格」が停止条件である。
逆に、法律効果が将来の不確実な事実によって消滅するとき、その事実を「解除条件」という。
停止条件付売買契約
将来に一定の事実が発生したときに初めて法律的な効力が生じる旨を特約した売買契約。停止条件付き売買契約は、条件とされている事実が発生するまでは法的な効力(たとえば代金を支払う義務)は生じない。また、条件とされる事実が発生しなかった場合は、契約は無効となる。
たとえば、一定期間内にその土地に建物を建築することを条件とする土地売買契約(建築条件付き売買契約)、住宅資金の融資について金融機関の承認を得ることを条件とする宅地売買契約(ローン条件付き売買契約)、地主の承諾を条件とする借地権の売買契約は、いずれも停止条件付き売買契約である。
なお、将来に一定の事実が発生したときには法律的な効力が消滅する旨を特約した売買契約を「解除条件付き売買契約」という。
抵当権
債権を保全するために、債務者(または物上保証人)が、その所有する不動産に設定する担保権のこと。
債務者(または物上保証人)がその不動産の使用収益を継続できる点が不動産質と異なっている。
債権が弁済されない場合には、債権者は抵当権に基づいて、担保である不動産を競売に付して、その競売の代金を自己の債権の弁済にあてることができる。
抵当権者
ある人(甲)が他の人(乙)に対して債権を有している場合に、甲が債権を保全する目的のために、乙の所有する財産に対して甲が抵当権を設定したとき、甲のことを「抵当権者」という。
また、乙は「抵当権設定者」と呼ばれる。
Aが債権を保全する目的のために、第三者(丙)の財産に対して甲が抵当権を設定することがあるが、このときも甲は「抵当権者」と呼ばれる。また、このとき第三者の丙は「物上保証人」と呼ばれる。
抵当権設定者
ある人(甲)が他の人(乙)に対して債権を有している場合に、甲が債権を保全する目的のために、乙の所有する財産に対して甲が抵当権を設定したとき、乙を「抵当権設定者」という。
また、甲は「抵当権者」と呼ばれる。
甲がその債権を保全する目的のために、第三者(丙)の財産に対して甲が抵当権を設定することがあるが、このとき第三者の丙は「物上保証人」と呼ばれる。
抵当建物使用者の明渡し猶予
抵当権の実行により建物が競売されると、抵当権に対抗できない建物賃借権は買受人に承継されず、賃借人は建物を明け渡さなければならない。この場合、抵当権に対抗できない建物賃借権で次に掲げる建物使用者については、買受人の買受け(代金納付)のときから6か月を経過するまでは、明渡しが猶予される。
明渡猶予期間中、建物使用者は買受人に使用料を支払わなければならない。明渡猶予期間中に使用料の不払いが生じたときは、買受人が相当の期間を定めて1か月分以上の支払を催告し、その相当の期間内に支払いがない場合には、明渡猶予は適用されなくなる。
従来は短期賃貸借保護制度が置かれていたが、民法改正によりこの制度は2004(平成16)年3月31日をもって原則的に廃止された。そこで、これに代わって創設されたのが建物明渡猶予制度である。
手付
売買契約・請負契約・賃貸借契約などの有償契約において、契約締結の際に、当事者の一方から他方に対して交付する金銭などの有償物のこと(民法第557条・第559条)。
手付には交付される目的により、解約手付、証約手付、違約手付の3種類がある。
民法で手付とは、原則的に解約手付であるとしている。また一般に取引において交付される手付の大半は解約手付であると考えてよい。
宅地建物取引業法では、消費者保護の観点から、売主が宅地建物取引業者である場合にはその売買契約で交付される手付は解約手付とみなすという強行規定を設けている(宅地建物取引業法第39条第2項)。これを解約手付性の付与という。
なお、契約に従って当事者が義務を履行したとき、手付は代金の一部に充当される。
手付金等の保全
物件の引渡し前に買主が支払う金銭(手付金・内金・中間金)について、第三者に保管させる等の方法で保全することを「手付金等の保全」という(宅地建物取引業法第41条・第41条の2)。
手付金・内金・中間金を合わせて「手付金等」と呼ぶ。この手付金等は、物件がまだ買主に引き渡されない時点で買主が売主に交付する金銭である。
従って、売主が物件を引き渡せない等の不測の事態が生じた場合に、手付金等は、確実に買主に返還される必要がある。そこで、宅地建物取引業法(第41条・第41条の2)では、手付金等の保全について必要な措置を規定している。
1.手付金等の金額の要件
手付金等は一定の金額に達した場合にだけ、保全措置を講じる義務が生じる。その金額の要件は次のとおり。
1)工事完了前の宅地または建物の売買の場合
「手付金等の合計が代金の額の百分の五を超えるとき」または「手付金等の合計が1,000万円を超えるとき」には、保全措置を講じなければならない。
例えば2億2,000万円の一戸建て(未完成)の売買契約に際して買主が1,050万円の手付金を交付したとする。このとき2億2,000万円の5%は「1,100万円」なので、手付金は「5%以下」であり、この点では保全措置は不要に見える。しかし、手付金は「1,000万円超」であるので、やはり保全措置が必要になる。
また、例えば3,000万円のマンション(未完成)の売買契約に際して買主が300万円の手付金を交付したとする。このとき3,000万円の5%は「150万円」なので、手付金は「5%超」であり、保全措置を講じなければならない。
2)工事完了後の宅地または建物の売買の場合
「手付金等の合計が代金の額の百分の十を超えるとき」または「手付金等の合計が1,000万円を超えるとき」には、保全措置を講じなければならない。この考え方は上記1)と同じである。
2.保全措置の内容
上記の金額の要件を満たしたとき、講じるべき保全措置は次のとおり。
1)工事完了前の宅地または建物の売買の場合
手付金等の保全措置としては「銀行等による保証」と「保険事業者による保証保険」の2種類の措置のうち、どちらか一つを講じればよい。
2)工事完了後の宅地または建物の売買の場合
手付金等の保全措置としては「銀行等による保証」と「保険事業者による保証保険」と「指定保管機関による保管」の3種類の措置のうち、どれか一つを講じればよい。
3.保全措置が不要とされる場合
次の4とおりの場合には、保全措置を講じる義務がない。
1)金額の要件を満たさない場合:
上記1.の金額の要件に到達しないならば、保全措置は不要である。
2)売主が宅地建物取引業者でない場合:
保全措置を講じる義務を負うのは宅地建物取引業者だけである
3)業者間取引である場合:
売主・買主ともに宅地建物取引業者である場合には、両者とも不動産取引に精通しているので、保全措置は不要とされる(宅地建物取引業法第78条第2項)。
4)買主がその宅地建物について登記を取得した場合:
保全措置は物件の引渡し前の措置であるので、買主が登記(所有権移転登記または所有権保存登記)を取得した場合には、もはや保全措置を講じる必要はないとされる。
4.「工事完了」の意味について
上記1.および2.では、工事完了前と工事完了後で扱いが異なる。この「工事完了」の意味については、宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方で次のように説明されている。
工事完了は「売買契約時において判断すべき」である。また、工事の完了とは「単に外観上の工事のみならず内装等の工事が完了しており、居住が可能である状態を指すものとする」。
手付倍返し
売買契約成立時に買主が売主に解約手付を交付している場合において、売主が手付の倍額を買主に償還することにより、契約を解除することを「手付倍返し」という。
この手付倍返しによる契約解除では、売主は手付相当額以外の損害賠償を支払わなくてよいとされている(民法第557条第2項)。
テナント
事務所ビルや商業スペースの賃借人をいう。大型商業ビルにおいて、集客の中心となるのが「キーテナント」である。
テナントの業種構成や配置、賃料の設定などは、ビルの性格を決め、その収益性を左右する。
転貸借
所有者(甲)から目的物を借りた賃借人(乙)が、それを第三者(転借人、(丙))に使用収益させることをいう。
いわゆる「また貸し」であり、賃貸借の譲渡は転貸借とはいわない。
転貸借されても甲乙間の賃貸借関係は残る。丙は甲との契約関係はないが、甲に対して直接に賃料の支払い等の義務を負う。転貸借には、甲の承諾が必要で、これに反して転貸借がなされた場合には、甲は甲乙間の契約を解除できるし、丙に対して目的物の引渡しを請求できる。
ただし、目的物が宅地建物である場合には、転貸借に関して特別の取扱いがされている。
1.承諾がない場合であっても当事者間の信頼関係が壊されない限り甲の契約解除を許さない(判例による)
2.借地の転貸借について、裁判所が甲の承諾に代わって許可を与えることができる
3.甲が承諾しない場合、乙に対して建物買取請求権、造作買取請求権を与える
という特例である。
なお、賃借権を第三者に譲渡する場合も、転貸借と同様に目的物の所有者の承諾が必要で、宅地建物についての承諾に関して特例があるのも同じである。
ディンプルキー
シリンダーの作動によって制御される錠(シリンダー錠)の一つで、シリンダー内に並べられたピンの制御を、表面に多数の小さなくぼみ(ディンプル)が付いている鍵によって行なうものをいう。
鍵のパターンが非常に多く、鍵の複製が難しいのでピッキング(鍵穴に器具を差し込んで解錠すること)対策に優れているとされる。
デザイナーズ住宅
住むためのデザインに優れている住宅をいう。
デザイナーについての明確な定義はないが、設計による付加価値を重視する。
一般に、外観だけでなく、住み心地、使い勝手、安全性、耐久性などが良好なものをいうことが多い。
電気温水器
割安な深夜電力を利用して夜間に高温の温水を沸かし、貯湯タンクに蓄えておいて、台所・洗面台・風呂・シャワーなどへの給湯を賄う電気機器のこと。
深夜電力は通常の電灯料金の約3分の1程度と割安であり、また電気ヒーターで加熱するので二酸化炭素が発生せず、燃焼音がなく静かに湯を沸かすことができるというメリットがある。
近年では、湯を使用すると同時に必要な量の湯を自動的に追加して沸かすタイプや、給湯圧を高めて2階でも湯の出る勢いを高めたタイプなどさまざまな製品が普及している。また配管を電気温水器本体部に内蔵し、配管工事の手間を軽減した製品が主流となっている。標準的な貯湯タンクの容量は3人家族で300L程度が目安とされている。
浴槽への給湯については、給湯のみを行なうタイプ、自動的に風呂釜への湯はりを行なうタイプ(オートタイプ)、自動湯はりだけでなく自動追いだき・自動足し湯も行なうタイプ(フルオートタイプ)という3種類がある。
なお、電気温水器の「風呂追いだき機能」については昼間電力を使用するためコストが高いなどの課題があったが、近年は深夜電力の蓄熱を利用して熱交換方式で追いだきをすることにより、低コストかつスピーディな追いだきができる製品が開発されており、ガス給湯器に劣らない性能となっている。
登記済証
所有権保存登記、所有権移転登記、抵当権設定登記などの権利の登記をしたとき、登記手続きの完了後に、その権利の登記をした者(登記名義人)には、登記申請書の写し(副本)に、登記官が「登記済」と押印したものが返還されましたが、現在は登記識別情報という12ケタの暗号となっております。
昔は、登記名義人となった者に返還される、押印された申請書副本のことを「登記済証」と呼んでいました。
そして、登記済証は、登記名義人が所持する書面であり、その所持人が登記名義人であることを公的に証明する書面である。そのため登記済証は、別名「権利証」と呼ばれていたのです。
現在もその風潮は残っており、登記識別情報(暗号)の事を権利証と呼ぶ方が多いのです。
登記業務は、司法書士の業務となりますので、最寄りの司法書士事務所に相談することが良いでしょう。
投資信託委託業者
不動産投資信託において、投資法人から実際の投資判断を委託された不動産のプロのこと。
一般的に多くの場合、大手不動産会社・中堅不動産会社・商社・生命保険会社・損害保険会社などが投資信託委託業者として選任される。
不動産投資信託における投資法人は、資産運用方針・資金調達方針を決定する主体ではあるが、専門的な不動産運用の部署を投資法人の内部に設置することは法律上できない。
そこで、調達した資金をどの不動産に投資するか、どの不動産を売却するか等の専門的判断は、すべて不動産のプロであるところの投資信託委託業者に委託することとされている。
このように、不動産投資信託の実際の運用を行なうという意味で、投資信託委託業者は「ファンドマネージャー」「アセットマネージャー」「資産運用会社」と呼ばれることがある。
投資信託委託業者は、不動産運用に関する報酬を投資法人から受け取る。この報酬額の定め方は、上場された不動産投資信託の場合は、有価証券報告書で確認することができるが、多くの場合、運用成績に連動した報酬額とされている。
なお、投資法人が保有するオフィスビル等を実際に管理運営する不動産管理専門会社は、投資信託委託業者ではないことに注意。
投資法人
会社型投資信託において、投資家の資金によって投資を行なう主体となる法人をいう。
その構成員は投資主であるが、意思決定機関として投資主総会、業務遂行機関として役員会が設置されている。
投資法人の設立には内閣総理大臣への登録が必要で、出資総額は1億円以上とされるなど、一定の要件を満たさなければならない。
また、投資法人は、投資主に対して会計情報等を開示するなど、その業務運営に関して規制があり、金融商品取引法等によって金融庁等の監督を受ける。
なお、投資法人による投資運用は、実際には、投資信託委託業者が行なっている。
例えば、不動産投資信託(JREIT)の場合には、不動産と金融に詳しい専門家がこれに当たることが多い。
登録免許税
不動産の所有権を登記する場合や、抵当権を登記する場合に、登記所で納付する国税のことである。登録免許税は一般には「登記料」などと呼ばれることも多い。
登録免許税は、原則的には現金で納付し、その領収証書を登記申請書に貼付するが、その税額が3万円以下の場合には印紙によって納付することができる。
登録免許税の税率は、登記の種類ごとに次のように決められている(ただし住宅の建物部分の登記や土地の登記については登録免許税の軽減措置が設けられている)。
特殊建築物
特殊な用途を持つ建築物のことで、例えば多数の人が集う建築物(映画館など)や衛生上・防火上特に規制すべき建築物 (汚物処理場など)などがこれに当たる。
建築基準法では、こうした建築物については、特に厳しい規制を設けてしている。
建築基準法によれば、次の用途の建築物が「特殊建築物」である。
1.劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場
2.病院、診療所、ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎など
3.学校、体育館、博物館、図書館、ボーリング場、スケート場など
4.百貨店、マーケット、展示場、ダンスホール、キャバレー、料理店、飲食店、遊技場、公衆浴場など
5.倉庫
6.自動車車庫、自動車修理工場、映画スタジオ
さらに上記の1.から6.だけでなく、危険物貯蔵場、と畜場、火葬場、汚物処理場なども特殊建築物に含める場合がある。
特定行政庁
建築基準行政において、建築主事を置く市町村の区域については当該市町村の長を、その他の市町村の区域については都道府県知事をいう。
人口が25万人以上の市の市長は原則として特定行政庁であるほか、それ以外の市町村長も建築主事を置くことによって特定行政庁となる。
建築主事は建築確認等の業務を行なうが、違反建築物に対する措置等は特定行政庁の業務とされている。
特定目的会社
特定の資産を裏付けとした有価証券を発行するためだけに設立された法人で、「資産の流動化に関する法律」にもとづいて設立される特別な社団をいう。
通常SPC(Special Purpose Company)といわれ、また、TMKと略称されることもある。
不動産の証券化などのために活用される一種のペーパーカンパニーであり、資産処分とともに解散される。
その重要な機能は、証券化の対象になる資産を独立させ、責任を資産価値の範囲内に限定すること(倒産隔離機能)、および、投資家への二重課税を回避するための器となること(導管体機能)である。資産の管理運用などの具体的業務は、一定の要件を備えた会社等に委託される。
なお、資産の流動化に関する法律では、資産流動化の方法として、特定目的会社を用いる場合のほか、特定目的信託を用いる場合を規定している。
特定優良賃貸住宅制度
「特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律」により定められた制度で、居住環境が良好な賃貸住宅を中堅所得者等に対し供給するための仕組みをいう。
民間の土地所有者等が賃貸住宅を建設しようとする場合に、建設計画、入居者資格、賃貸条件などを内容とする供給計画について都道府県知事による認定を受けたときには、建設費の一部および家賃減額のための費用に対して補助を受けることができるとされ、そのようにして供給されるのが特定優良賃貸住宅(特優賃)である。
認定を受けるためには、住宅の規模・構造・設備が一定の建設基準に適合するほか、入居者を公募・抽選で決定する、
敷金は3ヵ月以内で礼金なし、家賃は市場家賃以下、一定の法人等が住宅を管理するなどの賃貸・管理に関する条件を満たさなければならない。
なお、この制度は、地方公共団体等が同様な賃貸住宅を建設・管理する場合にも同じように適用される。
特別決議
分譲マンションのような区分所有建物において、管理組合の集会で議案を議決する際に、特に重要な議案について特別多数の賛成により可決することを「特別決議」という。
この特別決議を必要とする議案は、区分所有法により次の8種類が規定されている。
1.管理規約の設定・変更・廃止(同法第31条)
2.管理組合法人の成立(同法第47条)
3.共用部分等の変更(同法第17条・第21条)
4.大規模滅失における建物の復旧(同法第61条第5項)
5.建物の建替え(同法第62条)
6.専有部分の使用禁止の請求(同法第58条)
7.区分所有権の競売の請求(同法第59条)
8.占有者に対する引渡し請求(同法第60条)
上記の8種類のうち、「建物の建替え」を除く7種類については、特別決議を行なうための議決要件は、「区分所有者数の4分の3以上」かつ「議決権の4分の3以上」の賛成である。
ただし「共用部分等の変更」についてはこの議決要件を管理規約により「区分所有者数の過半数」かつ「議決権の4分の3以上」の賛成にまで緩和することができる。
また「建物の建替え」についての決議要件は「区分所有者数の5分の4以上」かつ「議決権の5分の4以上」の賛成である。
都市計画
土地利用、都市施設の整備、市街地開発事業に関する計画であって、都市計画の決定手続により定められた計画のこと(都市計画法第4条第1号)。
具体的には都市計画とは次の1.から11.のことである。
1.都市計画区域の整備、開発及び保全の方針(都市計画法第6条の2)
2.都市再開発方針等(同法第7条の2)
3.区域区分(同法第7条)
4.地域地区(同法第8条)
5.促進区域(同法第10条の2)
6.遊休土地転換利用促進地区(同法第10条の3)
7.被災市街地復興推進地域(同法第10条の4)
8.都市施設(同法第11条)
9.市街地開発事業(同法第12条)
10.市街地開発事業等予定区域(同法第12条の2)
11.地区計画等(同法第12条の4)
注)
・上記1.から11.の都市計画は、都市計画区域で定めることとされている。ただし上記8.の都市施設については特に必要がある場合には、都市計画区域の外で定めることができる(同法第11条第1項)。
・上記4.の地域地区は「用途地域」「特別用途地区」「高度地区」「高度利用地区」「特定街区」「防火地域」「準防火地域」「美観地区」「風致地区」「特定用途制限地域」「高層住居誘導地区」などの多様な地域・地区・街区の総称である。
・上記1.から11.の都市計画は都道府県または市町村が定める。
都市計画区域
原則として市または町村の中心部を含み、一体的に整備・開発・保全する必要がある区域。
原則として都道府県が指定する。
1.都市計画区域の指定の要件
都市計画区域は次の2種類のケースにおいて指定される(都市計画法第5条第1項、第2項)。
1)市または一定要件を満たす町村の中心市街地を含み、自然条件、社会的条件等を勘案して一体の都市として総合的に整備開発保全する必要がある場合
2)新たに住居都市、工業都市その他都市として開発保全する必要がある区域
1)は、すでに市町村に中心市街地が形成されている場合に、その市町村の中心市街地を含んで一体的に整備・開発・保全すべき区域を「都市計画区域」として指定するものである(※1)。
なお、
1)の「一定要件を満たす町村」については都市計画法施行令第2条で「原則として町村の人口が1万人以上」などの要件が定められている。
2)は、新規に住居都市・工業都市などを建設する場合を指している。
(※1)都市計画区域は、必要があるときは市町村の区域を越えて指定することができる(都市計画法第5条第1項後段)。
また、都市計画区域は2以上の都府県にまたがって指定することもできる。この場合には、指定権者が国土交通大臣となる(都市計画法第5条第4項)。
2.都市計画区域の指定の方法
原則として都道府県が指定する。
3.都市計画区域の指定の効果
都市計画区域に指定されると、必要に応じて区域区分が行なわれ(※2)、さまざまな都市計画が決定され、都市施設の整備事業や市街地開発事業が施行される。また開発許可制度が施行されるので、自由な土地造成が制限される。
(※2)区域区分とは、都市計画区域を「市街化区域」と「市街化調整区域」に区分することである。
ただし、区域区分はすべての都市計画区域で行なわれるわけではなく、区域区分がされていない都市計画区域も多数存在する。このような区域区分がされていない都市計画区域は「区域区分が定められていない都市計画区域」と呼ばれる。
4.準都市計画区域について
都市計画区域を指定すべき要件(上記1.の1)または2))を満たしていない土地の区域であっても、将来的に市街化が見込まれる場合には、市町村はその土地の区域を「準都市計画区域」に指定することができる。準都市計画区域では、必要に応じて用途地域などを定めることができ、開発許可制度が施行されるので、無秩序な開発を規制することが可能となる。
土地区画整理組合
土地区画整理事業を行なう事業主体になることができるのは、個人、土地区画整理組合、都道府県、市町村、国土交通大臣、都市基盤整備公団等に限定されている(土地区画整理法第3条)。
このうち、土地区画整理組合とは、土地区画整理事業の施行される区域内の宅地所有者と借地権者が組合員となる組合であり、都道府県知事の認可によって設立される。
この土地区画整理組合を設立するには、区域内の宅地所有者と借地権者のそれぞれ3分の2以上が事業計画に同意することが必要である(土地区画整理法第18・19条)。
しかし、この土地区画整理組合がいったん設立されると、事業計画に同意した所有者・借地権者だけでなく、事業計画に反対した所有者・借地権者も強制的に組合員とされる(いわゆる強制加入方式:土地区画整理法第25条)。
このように土地区画整理組合を設立することで、区画整理を迅速に実施できる仕組みとなっている。
土地区画整理事業
市街地を面的に整備するために、土地の区画形質の変更や公共施設の整備を行なう事業の一つで、土地区画整理法に従って実施されるものをいう。
この事業の実施によって、例えば、不整形な土地や袋地が解消され、道路や公園が整備されることとなる。
土地区画整理事業の特徴は、
1.権利変換による土地の交換・分合(換地)という手法を採用すること
2.新たに必要となる公共用地を土地所有者が平等に提供するという仕組み(減歩)によって生み出すこと
である。
また、事業によって宅地の評価が増価するが、その一部を事業に充てるという受益者負担の考え方が取り入れられていることも大きな特徴である。
日本においては、農地から市街地への土地利用の計画的な転換、大震災後の市街地復興、街路網の整備などの手法として多用されてきた。
取引態様の明示
宅地建物取引業者が、取引の広告および取引の受注において、その取引態様を明示することをいう。
「取引態様」とは宅地建物の取引の形式をいい、
1.自己が契約の当事者となる(自己取引)、2.代理人として契約交渉等に当たる(代理取引)、3.媒介して契約を成立させる(媒介)
の3つに分かれる。
広告および取引の受注の際にそれに明示することは、宅地建物取引業者の基本的な義務である。取引態様に応じて、宅地建物取引業者の立場は、自己取引であれば自分が売主等、代理取引であれば自分は売主等の代理人であり、媒介であれば自分は契約当事者とならない、などという重要な違いが生じるからである。
また、取引形態が変われば、速やかに明示し直さなければならない。
土砂災害特別警戒区域
土砂災害警戒区域のうち、急傾斜地の崩壊等が発生した場合に建築物に損壊が生じ住民等の生命または身体に著しい危害が生ずる恐れがあると認められ、開発行為の制限や建築物の構造の規制をすべきとして指定される土地の区域をいう。
その指定要件、手続きなどは、土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(土砂災害防止法)で定められている。
土砂災害特別警戒区域内においては、住宅地分譲等のための開発行為(特定開発行為)について許可を要する、居室を有する建築物の建築確認について土砂災害を防止・軽減できる構造であることが必要、建築物の安全な区域への移転等の勧告・支援などの措置が講じられる。
なお、宅地建物取引業務においては、特定開発行為について許可を受けた後でなければ当該宅地の広告、売買契約の締結等をしてはならず、また、重要事項説明に際しては特定開発行為の許可に関する概要を説明しなければならない。
土壌汚染状況調査
土壌汚染対策法第3条および第4条によって土地所有者等に義務付けられている土壌汚染状況の調査のこと。
土壌汚染対策法では、揮発性有機化合物等の特定有害物質による汚染状況を把握し、健康被害を防止するために、次の2つの場合において土地所有者等に対して土壌汚染状況調査の実施を義務付けている。
1.有害物質使用特定施設の使用が廃止されたとき、その施設を設置していた工場・事業場の敷地であった土地について、土地所有者等は土壌汚染状況調査を実施しなければならない。これを有害物質使用特定施設に係る土地の調査という(同法第3条第1項)。ただし土壌汚染状況調査に代わる知事の確認を受けた場合には調査を実施しなくてよい(同法第3条第1項但書)。
2.都道府県知事は、上記1.以外の場合であっても、特定有害物質による土壌汚染により健康被害が生ずる恐れがある場合には、土地所有者等に対し、土壌汚染状況調査を実施することを命令することができる。これを健康被害が生ずる恐れのある土地の調査という(同法第4条第1項)。
なお、土壌汚染状況調査の方法は同法施行規則により詳細に法定されている。
上記1.および2.のどちらについても施行規則で定める方法により土壌ガス調査・土壌溶出量調査・土壌含有量調査のいずれか(または複数)を実施することとされている(同法施行規則第3~5条)。
な行
内容証明郵便
差出人が送った手紙(書面)の写しを郵便局が保存することにより、郵便局が手紙(書面)の内容を公的に証明するという制度である。
ただし、内容証明郵便はあくまで手紙の内容を証明するだけであり、その手紙が相手方に到達したことまで証明するものではない。そのため、通常は「配達証明付の速達書留内容証明郵便」として郵送するのが一般的である。
内容証明郵便を出すことができるのは、地方郵便局長が指定する郵便局に限られており、小さな郵便局(特定郵便局等)では取り扱わない。
内容証明郵便を書く要領は次のとおりである。
1.紙に次の字数で文章を書く(句読点も1字として計算する)。
1)縦書きの場合:1枚につき1行20字以内、1枚26行以内(520字以内)
2)横書きの場合:1枚につき20字×26行、13字×40行、26字×20行以内(520字以内)
2.使用できる文字は原則としてひらがな、カタカナ、漢字、および数字である。アルファベットは、氏名、会社名、地名、商品名などの固有名詞だけに使うことができる。また一般的に使用されている記号は使うことができる。
3.紙の大きさや種類は自由である。B5、A4、B4、コピー用紙、ワープロ用紙などでよい。また、手書きでもワープロ打ちでもプリンターからの出力でもよい。
4.上記1.2.3.の要領で作成した手紙のコピーを普通のコピー機で2部作成する。
5.手紙が2枚以上の紙になるときは、綴目(とじめ)に契印(けいいん)を押す(2枚以上からなる手紙の1枚目と2枚目にまたがって印鑑を押すことを「契印」という。契印に使用するのは、実印や代表者印である必要はなく、認印〔会社の場合は社印〕でよい)。
6.一つの封筒に、手紙に書いた相手方の住所氏名・自分の住所氏名と同一のものを書く。
内容証明郵便を郵便局で発送する手続きは次のとおりである。
1.用意した封筒、手紙、そのコピー2部、印鑑(実印や代表者印である必要はなく、認印〔会社の場合は社印〕でよい)を郵便局に持参する。印鑑を持参するのは、契印を忘れたときや郵便局で指摘を受け訂正をするために必要になる可能性があるからである。
2.書留、配達証明付き、内容証明、速達で郵送の手続きをする。料金は、手紙の枚数および封筒の大きさ・重量に応じて異なる。
3.コピーの1部に「この郵便物は○年○月○日第○号書留内容証明郵便物として差し出したことを証明します。○○郵便局長」と押印されたものが返却される。この押印されたコピーは、手紙の差出人が保管する(残りのコピー1部は郵便局に5年間保管される。手紙そのものは相手方に郵送される)。
2項道路
建築基準法第42条第2項の規定により、道路であるものと「みなす」ことにされた道のこと。
「みなし道路」とも呼ばれる。
建築基準法第43条では、建築物の敷地は「建築基準法上の道路」に2m以上の長さで接していなければならないと定めている。
ここでいう「建築基準法上の道路」は原則として幅が4m以上あることが必要とされている(建築基準法第42条第1項)。
しかし、わが国の現状では、幅が4m未満の道が多数存在しているため、次の1.~3.の条件を満たせば、その道を「建築基準法上の道路とみなす」という救済措置が設けられている(建築基準法第42条第2項)。
1.幅が4m未満の道であること
2.建築基準法が適用された際にその道に現に建築物が立ち並んでいたこと
3.特定行政庁(知事や市長)の指定を受けたことでの救済措置による道路のこと
これらを、その条文名をとって「2項道路」と呼んでいるのである。
こうした2項道路に面している土地については、道路中心線から2m以内には建築ができないという制限(セットバック)があるので注意を要する。
任意売却
住宅ローンの返済が困難になった場合に、抵当権が設定された住宅を法的手続き(競売)によらないで売却し、その代金によって残債務を解消する方法のことをいう。
住宅を売却するときには抵当権を抹消しなければならない。しかし、任意売却は、それを債権者(金融機関等)との協議によって行なうことができる。この場合、債権者の承諾が必要であるほか、売却を仲介する者の選任を求められるのが通例である。
任意売却は競売を回避する手法であるとともに、残債務の返済スケジュール等について交渉する余地を残した債務処理の方法である。
農業委員会
市町村に設置される独立の行政委員会で、農業者の代表機能を持つ合議体組織。公選された委員と推薦された委員とで構成される。
農地の権利移動許可、転用許可などに関して専属的な行政権限を持つ他、耕作放棄地の解消などの実施機能も担っている。
また、市街化区域内の農地転用に際しては、農業委員会に届け出ることが必要である。
農地転用
農地を農地以外の目的に利用する(これを、「農地の転用」と呼ぶ)場合に課せられる制限をいう。
農地法では、土地利用の調整と優良農地確保のために、農地転用に当たっては、原則として農林水産大臣または都道府県知事の許可を要すると規定しているが、これが農地の転用制限である。
農地の所有者が自分自身で転用する場合(自己転用)および転用を目的として農地の売買等をしようとする場合(転用目的の権利移動)には、面積の多少にかかわらずいずれも許可が必要である(農地法の根拠条文に即して、自己転用の許可を「4条許可」、転用目的の権利移動の許可を「5条許可」と呼ぶことがある)。ただし、重要な例外として、市街化区域内の農地の転用に関しては、農業委員会に届出すれば、許可は必要がないとされている。
市街化区域内農地以外の農地転用の許可に当たっては、
1.農用地区域内の農地、土地改良事業の対象となった農地等は原則的に不許可、市街化が見込まれる区域内の農地等は原則的に許可というような、農地の属性に応じた基準
2.周辺農地の営農に支障を生ずる恐れがない、当該農地に代えて周辺の他の土地を供することにより当該申請に係る事業の目的を達成することができないなどの条件を満たすかどうかという、転用の目的等に基づく基準(1.および2.の基準を合わせて「農地転用許可基準」と呼ぶ)
に照らして判断される。農地転用許可基準は、転用の状況に応じて詳細に規定されているので、十分な注意が必要である。
なお、農地法においては、自己転用や転用目的の権利移動のほか、農地を農地のままで売買等することについても、原則として許可が必要である(これを「3条許可」と呼ぶ)。また、許可を要するにもかかわらず許可を得ないでした売買契約等は、無効である。
は行
媒介契約
不動産の売買・交換・賃貸借の取引に関して、宅地建物取引業者が取引当事者の間に立ってその成立に向けて活動するという旨の契約をいい、売主または買主(賃貸借取引の場合には、貸主または借主)と宅地建物取引業者との間で締結される。
宅地建物取引業法は、媒介契約について、契約内容を記した書面の交付義務、媒介報酬の制限などを規定しているほか、媒介契約に従って行なう活動の方法等についてそのルールを定めている。
種類は
・一般媒介契約
・専任媒介契約
・専属専任媒介契約
がある。
バランス釜
浴室内に設置される風呂釜のこと。浴槽の脇に設置するタイプの風呂釜である。浴槽と風呂釜が接しているため、エネルギーの損失が少なく経済的という利点がある。
バランス釜は、浴槽に溜めた水を沸かす機能だけでなく、追い炊き機能・沸かし直しの機能を持つ。またシャワー機能を持つ機種もある。
ただし台所・洗面台への給湯機能は持たない。
バランス釜を設置する場合には、給排気を安全に行なうために、浴室内から戸外へと通じる排気筒を浴室内に設置する必要がある。また換気を確保するために浴室に換気窓を設けるケースが多い。
ファイナンシャルプランナー
生活設計における資金計画などに関して、顧客に助言する者。
ファイナンシャルプランナーが助言するのは、将来の居住、教育、老後生活などに関する資金計画で、たとえば住宅資金や不動産の相続に関する助言も含まれる。助言に当たっては、金融だけでなく、不動産、保険、年金、税制、相続制度などに関する幅広い知識が必要とされる。従って、ファイナンシャルプランナーは、それぞれの分野の専門家と連携して業務を進めることが多い。
ファイナンシャル・プランナーの資格には、技能検定による法定のファイナンシャル・プランニング技能士(1級・2級・3級)と、日本FP協会によって認定されるCFP(サーティファイド・ファイナンシャル・プランナー)資格及びAFP(アフィリエイテッド・ファイナンシャル・プランナー)資格がある。
不動産取得税
不動産を有償または無償で取得した場合や改築等により不動産の価値を高めた場合に、その取得者等に課税される地方税のことである。
不動産の所在地の都道府県が課税の主体となるので、実際の徴収事務は都道府県が行なうこととされている。
不動産取得税の税率は原則的に「不動産の固定資産税評価額の4%」とされている。
ただし「住宅の建物部分」に係る不動産取得税については「建物部分の固定資産税評価額の3%」とされている(地方税法附則第11条の2)。
ちなみにここでいう「住宅」には別荘を含まない。ただし、週末を過ごすため郊外に購入した2つめの住宅や、勤務地の近くに購入した2つ目の住宅といったいわゆる「セカンドハウス」はここでいう「住宅」に含まれる。
なお、一定の要件を満たす「住宅の建物部分」や一定の要件を満たす「住宅用土地」については、不動産取得税の税額そのものの大幅な軽減措置が設けられている。
不動産取得税は原則的には、不動産を取得した者に対して、不動産の取得の日において課税される(地方税法第73条の2第1項)。
ただし、新築によって建物を取得した場合には「最初に使用された日」または「譲渡された日」が「取得の日」とみなされて、その日における所有者が納税義務を負うケースがある(地方税法第73条の2第2項)。
不動産投資信託
投資信託のうち、不動産を運用の対象とするものをいう。
アメリカではREIT(Real Estate Investment Trust)、日本ではその日本版という意味でJREIT(ジェーリート)と称される。
不動産投資信託は、不動産の証券化手法の一つであり、その仕組みとして、
1.資金を信託したうえでその資金を不動産投資として運用する方法(契約型)
2.投資家が特定の法人を設立して不動産投資を行なう方法(会社型)
とがある。実際に日本で行なわれている不動産投資信託の大部分は会社型であり、その担い手を投資法人と呼ぶ。
投資信託によって得る利益の原資は、投資対象となる不動産の賃料等から得られる収益である。また、不動産の証券化に当たっては、倒産隔離、導管体機能などを確保することが必要となるが、投資信託は、制度的にこれらの要請を満たしている。
不動産投資信託は、日本では2000(平成12)年に解禁された。
分譲賃貸
分譲用の住戸(区分所有建物の1室等)を賃貸すること。
分譲用住戸と賃貸用住戸との違いはないとされる。
プロパティマネジメント
委託を受けて不動産の管理・運用を行なう業務をいうが、特に収益性の確保・向上をめざした業務を示すことが多い。
その業務は、大きく、運用計画の立案、賃料の設定、テナントの募集・契約締結行為などの運用業務と、不動産や設備の維持・保全、予算・収支の管理などの管理業務に分けられるが、両者を総合化して、当該不動産から得られる収益を最適化することが最も重要であるとされる。
ま行
マスターリース
商業用不動産を賃貸する場合に、建物を一括して賃貸し、その賃借人が実際の賃借人にさらに賃貸する方法がある。マスターリースは、この場合の一括の賃貸借をいう。また、マスターリースによって賃借した者が実際の賃借人に賃貸することを「サブリース」という。
マスターリースによって、不動産所有者は賃貸業務をアウトソーシングし、賃借人はサブリースによって不動産の賃貸経営を行なうことになる。
なお、不動産の証券化において、もとの不動産所有者が証券化の対象となる不動産(所有権は不動産所有者から信託会社、特定目的会社などに移転する)をそのまま賃借することもマスターリースである。
免許(宅地建物取引業)
宅地建物取引業を営もうとする者は、都道府県知事または国土交通大臣に宅地建物取引業の免許を申請し、免許を受けることが必要である(宅地建物取引業法第3条)。
不正の手段で宅地建物取引業の免許を受けた者や、無免許で宅地建物取引業を営んだ者には、3年以下の懲役または100万円以下の罰金という罰則が予定されている。(法第79条第1号、第2号)
免許を受けるには、宅地建物取引業を営もうとする者(個人または法人)が、一定の不適格な事情(欠格事由)に該当しないことが要件とされている(法第5条第1項)。
この免許の欠格事由は、法律により詳細に規定されている。
また、宅地建物取引業の免許を受けるには、免許申請書および免許申請書の添付書類を都道府県知事または国土交通大臣に提出する必要があり、その記載事項等は詳細に法定されている(法第4条第1項、第2項、施行規則第1条の2)。
なお、宅地建物取引業の免許の有効期間は5年とされている(法第3条第2項)。
免許の有効期間の満了後、引き続き宅地建物取引業を営むためには、有効期間満了の日の90日前から30日前の期間内に免許の更新の申請書を提出する必要がある(法第3条第3項、施行規則第3条)。
や行
家賃保証会社
賃貸住宅の賃借人が負う家賃支払債務について、連帯して保証する会社。
家賃保証会社の連帯保証責任は賃借人との保証委託契約によって成立する。委託契約の締結に当たっては、家賃保証会社が賃借人の家賃支払能力等について審査するのが通常。
契約が成立すれば、賃借人は保証料を支払い、家賃保証会社は、賃借人が家賃支払債務に関して不履行が生じた場合に賃借人に代わって代位弁済する。この場合、代位弁済した家賃保証会社は賃借人に対する求償権を得ることとなる。
家賃保証は、従来、連帯保証人によることが多かったが、保証人に予期しない負担を負わせる可能性があること、保証人を依頼することが難しいことなどから、それに代わって、家賃保証を業務とする営業が一般に広まった。
家賃保証会社は、賃貸人の債務負担能力の審査、代位弁済した家賃の求償などを担うことから、健全な業務運営を確保し、賃借人の利益を保護する必要がある。
そこで、国土交通省は、家賃保証会社が登録するしくみ(家賃債務保証業者登録制度)を創設した(2017年10月)。この制度によって、登録した家賃保証会社は、保証業務の実施に当たって、契約前の重要な事項に関する説明・書面交付、賃借人毎の弁済履歴を記録した帳簿の備付け、受領した家賃等についての自己の財産との分別管理、暴力団員等への求償権の譲渡等の禁止などのルールを遵守しなければならないとされている。
容積率
延べ面積を敷地面積で割った値のこと。
例えば、敷地面積が100平方メートル、その敷地上にある住宅の延べ面積が90平方メートルならば、この住宅の容積率は90%ということになる。
建物の容積率の限度は、原則的には用途地域ごとに、都市計画によってあらかじめ指定されている。
さらに、前面道路の幅が狭い等の場合には、指定された容積率を使い切ることができないケースもある。
用途地域
建築できる建物の用途等を定めた地域。都市計画法に基づく制度である。
用途地域は、地域における住居の環境の保護または業務の利便の増進を図るために、市街地の類型に応じて建築を規制するべく指定する地域で、次の13の種類があり、種類ごとに建築できる建物の用途、容積率、建ぺい率などの建築規制が定められている。
・住居系用途地域:「第一種低層住居専用地域」「第二種低層住居専用地域」「第一種中高層住居専用地域」「第二種中高層住居専用地域」「第一種住居地域」「第二種住居地域」「準住居地域」「田園住居地域」
・商業系用途地域:「近隣商業地域」「商業地域」
・工業系用途地域:「準工業地域」「工業地域」「工業専用地域」
用途地域の指定状況は、市区町村が作成する都市計画図に地域の種類ごとに異なった色を用いて表示され、容易に確認できるようになっている。
なお、用途地域は、都市全体にわたる都市機能の配置及び密度構成の観点から検討し、積極的に望ましい市街地の形成を誘導するため、都市計画区域マスタープランまたは市町村マスタープランに示される地域ごとの市街地の将来像にあった内容とすべきであるとされている。
ら行
リノベーション
新築を除く住宅の増築、改装・改修、模様替え、設備の取替えや新設などの改造工事を総称してリノベーションという。
リフォーム、リモデルなどともいう場合がある。
既存建物の耐震補強工事もリノベーションの一種である。
連帯保証
保証人が、主たる債務者(本来の債務者)と連帯して債務を負担すること。債権者と保証人とが書面による保証契約を締結することによって成立する。
保証人は、主たる債務者が債務を履行しないときその債務を履行する責任を負っている。この場合、普通の保証人は、債権者に対して、まずは主たる債務者に対して債務履行を催告すべきと主張すること(催告の抗弁権)ができ、また、主たる債務者に弁済の資力があって容易に執行できると証明したときにはまずは主たる債務者の財産について執行すべきと主張すること(検索の抗弁権)が認められている。しかし、連帯保証の場合にはそのような主張をする権利(抗弁権)がなく、債権者が要求すれば、主たる債務者と区別されること無く債務を履行しなければならない。
融資取引や不動産取引において単に「保証」という場合には、実際には「連帯保証」であることが多い。従って、保証契約を締結する際には、普通の保証なのか、それとも連帯保証であるのかを確認する必要がある。
なお、民法(債権関係)改正(施行は2020年4月1日から)によって、
1)連帯保証人の一人について生じた事由は、一定の事由を除き他の連帯保証人に対してはその効力が生じないこと(相対的効力の原則)
2)個人の保証人については、保証契約時に債務額が確定しない保証(信用保証、身元保証、賃貸借上保証など)の場合にはその限度額を定めなければならず、その額を限度に履行責任を負うこと(限度額を定めなければ保証契約は無効となる)
3)事業用の融資に係る経営者以外の保証人(連帯保証の場合を含む)については、公証人による意思確認手続が必要であること
4)保証人に対し、主たる債務者の財産等の状況(事業用の融資に係る場合)、主たる債務の履行状況及び期限の利益の喪失に関する情報を提供すべきこと。が定められた。
レントロール
主に収益用不動産の賃貸借条件を一覧表にしたものをいう。
部屋・賃貸スペース別に、家賃・敷金等、契約日・契約期間等の契約条件が記されている他に、賃借人の詳細が記載されていることもある。
形式については、特に決まりはないが、主に収益用不動産の調査・評価に当たって活用されている。
わ行
ワンルーム
一部屋で構成する住戸又はその間取りをいう。居室(リビング)、浴室・トイレ、キッチンを備えている。
「ワンルームマンション」は、ワンルームで構成された集合住宅又は住戸そのものをさすが、その間取りは、一つの居室とキッチンスペースとが仕切られ、キッチンが独立しているタイプのものが多い。
一方、「ワンルーム」のなかには、部屋に間仕切りがなく、キッチンスペースを含めて一部屋だけの住戸もある。
不動産の間取り表示において、キッチンスペースが仕切られているワンルームを「1K」、仕切られていないワンルームを「1R」と一般的に区別する。